ブックタイトル人道ジャーナル第3号

ページ
110/288

このページは 人道ジャーナル第3号 の電子ブックに掲載されている110ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

ActiBookアプリアイコンActiBookアプリをダウンロード(無償)

  • Available on the Appstore
  • Available on the Google play
  • Available on the Windows Store

概要

人道ジャーナル第3号

The Journal of Humanitarian Studies Vol. 3, 2014日本赤十字秋田看護大学・日本赤十字短期大学災害救護訓練の発展と今後の課題日本赤十字秋田看護大学新沼剛はじめに日本赤十字秋田看護大学・日本赤十字秋田短期大学(以下、「本学」とする)では、平成21年度から年に一度、災害救護訓練を実施してきた。日本赤十字社(以下、「日赤」)は、日本赤十字社法に基づき、災害に備え、常時、救護員を確保する責務を負っている(1)。従って、日赤の看護師等養成施設は、その責務の一端を担い、救護員に必要な基礎的能力を備えた看護学生を養成していく必要がある。実際、本学看護学部では救護の向上に寄与できる人材を育成することを教育目標の一つとしている。また、少子高齢化が進展している今日、介護学生に対しても、高齢者や障がい者等の災害時要援護者への対応に必要な基礎的能力を習得させることが求められている。このように、日赤の看護師等養成施設で実施されている災害救護訓練は、法の基本理念である「戦争の中にも慈悲を」と「人道を通じて平和へ」という人道的価値観を育むとともに、それを現実の社会の中で行動化できる人材を育成することを目的としていた。その目的を達成するために、7つの教育プログラム(「人道的価値観を育む教育の推進」、「模擬災害救護訓練の実施」、「ボランティアの日の推進」、「ライフ・スキル講習の推進」、「遠隔授業の推進」、「スタディ・ツアーの推進」、「地球のためのこだわり宣言の推進」)を実施した。7つの教育プログラムの1つである災害救護訓練は平成21年度から始まった。活動内容は、以前から実施されてきた学内の避難訓練にテント設営、通信伝達(トランシーバーの使用、報告)、搬送、応急処置、バイタルサインの測定、煙中体験を加えたものであった(2)。学内で火災が発生し、避難途中で熱傷や外傷を負った学生が多数発生したというシナリオで訓練は実施日赤の責務並びに社会の要請に対応したものといえる。された。搬送班は救護所まで傷病者を搬送し、応急処本学の災害救護訓練は、災害時に行う救護活動や避置班が搬送された傷病者への応急処置を担当した。平難所での支援活動の全体像と、活動時における支援者成21年度の訓練は、午後の2時限(約3時間)を使の役割を理解し、将来、災害救護活動の推進者としてった小規模な訓練で、全学年を対象としていたもの必要な基礎的能力を養成することを目的としている。の、傷病者役が12名で、搬送や応急処置も一部の学平成25年度、本訓練は第5回目を迎えたが、その間、生しか体験ができなかった。プログラムの漸進的な充実を図り、本学学生は災害救平成22年度に入り、本学の模擬救護訓練の担当者護活動に必要な知識や技術を幅広く理解することが可は日赤秋田県支部職員と定期的に会合を開き、訓練の能になった。一方で、回数を重ねるにつれ、企画運営質的・量的充実に向けた取り組みを始めた。支部から上の課題が顕在化している。は、日赤第1ブロック支部合同災害救護訓練で実施さ本稿では、こうした背景を踏まえ、平成21年度かれているいくつかのプログラムが提示され、そのうちらの5年間の災害救護訓練を振り返り、その歴史的発看護・介護学生でも実施可能なプログラムを抽出し、展と訓練の概要を紹介するとともに、今後の課題につ本学の災害救護訓練に組み込んだ。訓練内容についていて報告する。は、テント設営、通信伝達、炊き出し、トリアージ、搬送、応急処置に加え、傷病者の苦痛を理解するために、傷病者役も設定し、学生は4年間で複数の役割をⅠ.災害救護活動の発展体験できるようになった。また、災害時の被災者、支平成20年度から平成22年度の3年間、本学は文部援者、自己のメンタルヘルスへの理解を深めるため科学省の「質の高い大学教育推進プログラム(教育に、こころのケアの講義も実施された。実施期間も2GP)」として採択された「国際人道法の理念を行動化日間とし、1日目にオリエンテーション、こころのケする教育の推進」事業を展開した。本事業は国際人道アの講義、各役割の練習を実施し、2日目に本訓練を108人道研究ジャーナルVol. 3, 2014