ブックタイトル人道ジャーナル第3号

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概要

人道ジャーナル第3号

The Journal of Humanitarian Studies Vol. 3, 2014力行使禁止原則)や同第51条(自衛権)は、jus ad bellum中の最重要の規則であり条約規則であるが、慣習法にもなっていると考えられる。こうした規則に反した武力行使は違法と評価され、この評価は、武力行使で使用される兵器の種類とは無関係に妥当する。jus ad bellum違反状況における核兵器使用は違法となるが、これは核兵器故にそうなるわけではなく、槍や小銃の使用でも変わらない。jus in belloすなわち国際人道法の分野に戻るならば、それは、兵器使用について陸海空戦のいずれでも妥当(22する次の二原則を掲げる。すなわち、攻撃)を人的又は物的の合法的目標にのみに指向することを要求する(23目標区別原則、及び敵の戦闘員等)に過度の傷害又は無用の苦痛を与えてはならないの原則である。目標区別原則は、合法的目標への攻撃の指向を要求するから、人的及び物的の目標の定義が重要である。防守地域無差別攻撃許容規則が最早妥当せず軍事目標主義に一本化されたと認識されるので、軍事目標主義の語を人的目標についても使用するとすれば、目標区別原則は軍事目標主義と同義である。なお、目標区別原則ないし軍事目標主義は、合法的目標以外に巻き添え損害、すなわち付随的損害が生じることを直ちには違法とはしない。但し、合法的目標破壊から得られる軍事的利益に比し付随的損害が過度となったならば、当該合法的目標破壊も含めて違法と評価される。もう一つの原則、過度の傷害又は無用の苦痛を与えてはならないの原則は、合法的な人的目標に対する攻撃の場合に適用される。すなわち敵の戦闘員及び敵対行為に直接参加する文民が人的な合法的目標であって、右人的目標以外には、付随的損害の場合を除いていかなる傷害も苦痛も与えることはできないから、それについて過度の傷害や無用の苦痛を観念することはできないはずである。落命を必然にする兵器の使用禁止規則もこの原則のコロラリーである。これら二原則は慣習法規則である。それを条約で表現することもある。例えば、1980年特定通常兵器使用禁止制限条約に附属の議定書の多くは、二原則の一方又は双方を特定の通常兵器について当てはめて使用を条約で禁止する。なお、二原則の一方又は双方に常に反する兵器は、条約で禁止することができるが、合意さえあればいかなる兵器の使用も禁止できるから、条約で使用が禁止された兵器が二原則の一方又は双方と必ず抵触するとはいえない。要するに核兵器の場合も、まずは条約規則で禁止されるかを判断し、そうでない場合には、核兵器と他の兵器に均しく適用されることがすでに確認されている上記二原則という慣習法規則で禁止されるかを判断することになる。(2)目標区別原則目標区別原則は、1907年ハーグ陸戦条約附属陸戦規則や第一追加議定書その他の条約にも表現されている(24)。但し、目標区別原則との関係において核兵器を名指ししてその使用を評価する条約規則はない。また、第一追加議定書で設けられた新規則の核兵器への適用を議定書批准時等の宣言の方式で否定する国もある(25)。これらの宣言が有効であるとすれば、宣言国による核兵器使用は、第一追加議定書から判断できず、適用可能な他の条約及び慣習法による。全ての兵器は、目標区別原則に反する使い方ができる。例えば中口径榴弾砲から通常弾頭の砲弾を発射する場合、敵野砲陣地という合法的目標だけに向け、それだけを破壊することはできる。しかし、敵対行為に直接参加していない文民のみが存在し物的軍事目標もない村落に向けて発砲すればこの原則に反す。特定目標指向可能な兵器は、目標区別原則に反さない使用方法が可能であるから、兵器そのものの固有の性格からして使用が禁止される類の兵器にはならないのである。つまり、榴弾砲が点目標のみの破壊ができるように核兵器もそうできれば、兵器の使い方の問題、すなわち、害敵方法の問題にとどまって、兵器そのものの固有の性格から規制をかける害敵手段の規則の問題にはならない(26)。目標区別原則からする核兵器評価問題の焦点は、この原則に反さない核兵器使用がありうるかにある。高性能爆薬換算10キロトンの核兵器を軍事目標である市ヶ谷防衛省の上空100メートルで爆発させた場合、過度といえる付随的損害が防衛省敷地外の市街地に発生するであろう。下田事件判決でも「原子爆弾による爆撃が10人道研究ジャーナルVol. 3, 2014