ブックタイトル人道ジャーナル第3号

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概要

人道ジャーナル第3号

The Journal of Humanitarian Studies Vol. 3, 2014ぱいあると思ったんです。あとは、本当にポルポトの大量虐殺って、私もものすごく印象に残っていますし、一方で、だからこれだけ豊かに見えるけれど、一方でというのもありましたし、あるいは、売春宿みたいになっているエリアに寄ったりしたんですけれど。山本:ああ、あったな、あった。篠崎:当時、本当にもういたいけな高校生がですよ。ちゃんと、あまり意味も、もちろん分かっていないわけじゃないけれど、本当にはたぶん分かっていなかったと思うんですけれど。だから、いま行ったら、もしかしたら違う印象を受けるだろうとは思うんですけれど。そういう意味でいろいろな刺激を受けて、私も開発援助に進みたいと思って、大学は経済で開発経済学をやっていたんです。ただ、ちょっといろいろ考えた揚げ句に、負い目というか、援助のほうに行くには、自分の能力が、経済で援助のほうに行くには自分の能力が足りないなと思ったこともありまして、私の次の世代の、もう少し私よりできがいい子どもたちが、私が例えばつくったテレビ番組を見て、途上国に少しでも関心を持ってくれたら、そっちに進むきっかけになってくれたらいいなというのがあって、結局、NHKに来た理由なんですが。東浦:いま現在は生活情報チームということで、例えばどんな番組をおつくりになっているんですか。篠崎:実は夏に異動したばかりで、夏まで経済部に8年いたんです。なので、経済部だと普通の企業取材が多いんですけれど、私の中で一番印象が強いのは、温暖化、気候変動の国際交渉を2年ちょっとぐらいずっとやらせてもらって、ちょうど日本の洞爺湖サミットの時期にそのエリアを担当していた。洞爺湖サミットのときって、温暖化がすごい話題になっていたんです。国際交渉の現場に行くと、ものすごく南南問題が凝縮されたように見えるんです。南北問題でもあるが南南問題でもあるという、そういう意味では、もともと、そういう取材がしたくてこの会社に入ったんです。ああ、たぶん、いま伝えるんならこういうことだなと。つまり、本当に最貧国だとか、あるいは島々だとかで困っている人たちがいて、中国だとかみたいな新興国がむしろ、そこに対してはたぶん加害者というか、加担する側に回っているんだけれども、彼らは先進国を攻めるという、何となく縮図を見られたような気がしていて、そういう目線は今後とも持っていたいなというふうには思っています。井上:いまの話で思い出しました。私はバングラデシュ班だったのですが、派遣員は高橋利之さん、高橋陽子さん、福島郁子さんの3人だったんですよ。高橋利之さんは青年海外協力隊で一度バングラへ行ったことがある方ですね。彼は非常に現地でも元気で、バングラデシュ人もびっくりするような感じだったんです。他の方々は女子学生さんで、バングラデシュの環境には苦労されていたようでした。やっぱり東京の生活からいきなりの途上国ですからね。地方へ行くともうトイレ一つとってもハードルが高かったようです…。そんなこんなで体調崩すメンバーもいました。メンバーにとっては、体験は結構きつかったようですね。ベンガル湾のハティア島まで船で行き、それからさらにニザムディップ島まで行きましたが、ダッカから2日がかりの移動ですから。ところが、数年後のことです。日比谷公園でNGOのフェスティバルをやっていた時です。ちょっと覗いてみようと行ってみたら、「井上さん、井上さん」って声を掛ける人がいる。誰かなと思ったら、すぐには分からなかったんですが、「私です、高橋です」って。高橋陽子さんだったんですね、「あれ、何で、君がここにいるの」って聞いたら、「いま私、フィリピンの子どもたちを支援するNGOに入っているんです」っていうことでした。それで、“ええー、あのときの学生が開発援助に参加を?”“こういうところで活動しているのか”という一種の驚きがありました。“ああ、やっぱりあの体験で育ったのかな”という思いを新たにしたのを覚えています。いま、何をやっているか、私はちょっと存じ上げないんですが、そういうようなことがありました。もう一つ、この「裸の体験」事業が成功した大きな要素の一つは、やっぱり、優秀な現地駐在員があった128人道研究ジャーナルVol. 3, 2014