ブックタイトル人道ジャーナル第3号

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概要

人道ジャーナル第3号

The Journal of Humanitarian Studies Vol. 3, 2014国際赤十字・赤新月博物館が新装オープン~人々の五感に訴え、知的好奇心を満たす工夫満載~赤十字国際委員会(ICRC)駐日事務所眞壁仁美昨年2013年の5月18日、スイス・ジュネーブの赤十字国際委員会(ICRC)本部敷地内に、「国際赤十字・赤新月博物館」が新装オープンした。21世紀に入って、世界はさまざまに変化を遂げ、同時に人間の抱える悩みや痛み、悲しみの形もますます多様になってきた。同博物館が1988年にオープンしてから25年、赤十字は、世の中のそうした変遷を反映すべく改装を決めた。独特の展示法を取り入れた新しい博物館は、赤十字の150年の歴史を語ると同時に、未来の希望へとつなげることに主眼を置いている。ジュネーブの主要ガイドブックの目玉の一つであり、22ヵ月の歳月を経ての待ちに待ったオープンだった。博物館は、常設展、企画展、特別コーナー「On the Spot」に分かれている。常設展「人道主義の冒険~The Humanitarian Adventure」は、「人間の尊厳」「家族間のつながり」「自然の脅威」をテーマに、三つのセクションが設けられている。受付で音声ガイダンスをもらって、いよいよ“冒険”の始まり。一番最初に出会ったのは、国籍の違う12人の証言者だった。スーダン人の元子ども兵士、ルワンダ虐殺の生存者、グアンタナモ基地で収容されていた中東の放送局アルジャジーラのジャーナリスト、そして、3.11の東日本大震災後に犠牲者の身元確認に当たった日本人歯科医もそこにいた。それぞれの立場から語られる「人道」との関わり。博物館によると、彼らは現代のアンリー・デュナンなのだという。彼ら一人ひとりの証言に触れることで、この先の冒険に何が待ち受けているのか、歩みを進める上での期待と、ある種の覚悟が生まれてくる。人間の尊厳を守る12人の証言コーナーを抜けると、本家本元のアンリー・デュナンが鎮座していた。机に座って書いているのは「ソルフェリーノの思い出」。デュナンがこの一冊をしたためたことで、のちに赤十字が生まれることになる。大切な一冊だ。デュナンの下にはスクリーンがあって、赤十字創設に導く彼のアイデアが延々と流れている。「ソルフェリーノの思い出」を執筆中のアンリー・デュナンのもとを去ると、さまざまなオブジェや書類、デュナン像cICRC写真が暗転した空間に浮かび上がってくる。今年、誕生から150周年を迎えた戦時のルール・ジュネーブ条約の調印文書をはじめ、二つの世界大戦や脱植民地化時代の歴史の証言が、展示物そのものによって語りかけられてくる。周囲を見渡すと壁には文章が投影されていて、これまで世界中で踏みにじられてきた人間の尊厳を淡々と人道研究ジャーナルVol. 3, 2014 135