ブックタイトル人道ジャーナル第3号

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概要

人道ジャーナル第3号

The Journal of Humanitarian Studies Vol. 3, 2014告げている。その中央には大きな足が、恐れおののく人々の映像を踏みつけていた。さまざまな展示物と一緒に一通り人道の歴史を振り返ると、吹き抜けの空間へと出る。そこには、捕虜など収容所に拘束されていた人たちが制作した“作品”が展示されていた。拘束され、自由を奪われた人々も、収容所内できちんと人間として扱われ、人としての生活を送る権利を有する。展示品は、牛乳のパックや魚の骨など、収容所内で手に入れられるものによって作られていた。一つ一つを丁寧に見ていくうちに、敵側に拘束された自らの境遇を忘れて、制作に没頭している人たちの姿が目に浮かんでくる。特に、民族性の豊かな、彼らのアイデンティティーを具現化したような作品は、その作業過程が彼らに生きがいをもたらしていたのではないか、とすら感じさせる。第一次大戦中にロシア人捕虜が魚の骨で作ったティーセットcICRC離れ離れになった家族をつなげる赤十字は、紛争や自然災害で離れ離れになった家族に対して、その消息を突き止め、メッセージ(赤十字通信)を届けたり、再会へと導く活動も行っている。東日本大震災でもそうだったように、大きな災害に見舞われたり戦闘に巻き込まれたりすると、人間はまず離れて暮らす家族や愛する人を心配する。何とか連絡を取って無事であることを確認したいと、切に願う。身内や愛する人とのつながりが絶たれると、心の深いところのバランスが崩れてしまう。家族のつながりがテーマのこのセクションは、天井からつるされた鎖ののれんを掻き分けて、中へと進む。国際捕虜局が扱った600万件の個人情報が収められている通路を抜けると、体験コーナーへと出る。ここでは、実際にいた捕虜のデータが公開されていて、収容所発行のIDカードと赤十字の登録カードを照合させ、最終的に彼らの身に何が起こったのかを追跡調査できる。その先には、赤十字通信でできた「メッセージの木」、人間を感知する最新のスピーカーから行方不明者の情報が流れるラジオコーナーなどがある。このセクションで最も圧巻なのは、中央にそびえ立つモニュメントだ。ルワンダ虐殺で孤児となった子どもたちの写真が塔の形を成している。塔の中は、愛する人の消息・無事を突き止めたい、という必死の想いが宿った展示品で溢れていた。そこには、個人を特定するため、集団埋葬された場所から出てきた物品を撮影した写真なども含まれている。自然の脅威を減らす日本人にとって関心の高い自然災害をテーマにしたこのセクションは、日本人建築家の坂茂氏によって設計された。壁も天井も厚紙を丸めた筒でできている。入り口の近くには、「ハリケーン」と銘打ったゲームコーナーがある。村の長や専門家、赤十字の職員として、マングローブを植えたり、高床式の避難所を建設したり、避難訓練を主導したりして、やがてくるハリケーンに立ち向かう。最終的に何人の命を救えたかを競うゲームで、自然災害に備えることの重要さを学ぶという主旨だ。セクション中程にある“theatres optiques”は、水槽のような小さな空間の中で、ミニチュアを用いて津波136人道研究ジャーナルVol. 3, 2014