ブックタイトル人道ジャーナル第3号

概要

人道ジャーナル第3号

The Journal of Humanitarian Studies Vol. 3, 2014国際的武力紛争に適用される規則の方がはるかに多く存在する。さらに、慣習国際法として知られる国際法のもう一つの分野があり、それは本来は国際的武力紛争のために発展したが、非国際的武力紛争にも適用される。国際人道法は、主として紛争当事国及び紛争当事者（例えば、武装集団）を対象とするが、その規定の多くは、個人にも尊重されなければならない。国は、その規範を尊重し、あらゆる違反を防止する義務があり、加えて重大な違反行為、特に戦争犯罪のような重大な違反行為について責任を有する者を訴追するか、又はそのような者の引渡しを行う。国が訴追を行う意思又は能力がない場合は、適当な時には、その責任はハーグの国際刑事裁判所に移転する。さらに、国際社会は、特定の紛争との関連において行われる犯罪の訴追のための国際的なアド・ホック裁判所を設置していた（例えば、旧ユーゴスラヴィア国際刑事裁判所及びルワンダ国際刑事裁判所）。紛争当事者は、すべての場合において、及び相手の行動にかかわりなく、国際人道法を尊重しなければならない。当事国は、他の当事者が国際人道法を遵守していないことを主張して、自己の義務を免れることはできない。それ故、違反について責任を問われる当事国は、他の当事者が同様の違反をしたことを理由に、その行為を正当化することはできない。条約法で一般的に援用される停止規定は、ここでは一切有効性を持たない。さらに、国は、敵がジュネーヴ諸条約に加入していない場合においても、それらに拘束される。この「ABC」の目的は、国際人道法の重要な概念を説明し、読者に国際法のこの特定の分野に慣れ親しんでもらうことである。この分野に関する網羅的な用語集を意図したものでは全くない。用語集あっせん（Good offices）二つ又はそれ以上の国の間の紛争について平和的解決を探し出す第三者の取り組みを表現するために使用される一般用語である。あっせんの目的は、関係当事者間の対話を開始することである。あっせんは、技術的又は設営的な性質の支援（例えば、紛争当事者のための会議の開催場所の用意）から、仲介、国際平和維持活動への参加に及ぶ。国、赤十字国際委員会又は国際人道事実調査委員会は、紛争を終結させることを援助するために、あっせんを行うことができる。アド・ホック裁判所（Ad hoc tribunals）ルワンダ及び旧ユーゴスラヴィアにおける紛争を受けて、国際連合の安全保障理事会は、戦争犯罪、集団殺害犯罪及び人道に対する犯罪を訴追するために、二つのアド・ホックな国際刑事裁判所（internationaltribunals）を設置した。これらの裁判所の管轄権は、─国際刑事裁判所（International Criminal Court）のそれとは違い─期間に限定があり、さらに特定の紛争に限られている。他にも、混合裁判所（mixed courts）があり、現地職員及び国際職員で構成され、特定の紛争又は特定の体制下で行われた犯罪を訴追する。シエラレオネ特別裁判所、及び民主カンプチア時代に行われた犯罪を訴追するカンボジア特別裁判所がその例である。化学兵器（Chemical weapons）化学兵器は、健康に危険で、人や動物に死を引き起こし、又はそれらを一時的に抵抗不能な状態（戦闘外）にし、若しくは永続的な損傷をもたらし得る化学物質を含む。これらの物質は、食糧、飲料及びその他の物資も汚染し得る。第一次世界大戦における化学兵器使用の悲惨な結果を受けて、1925年に窒息性ガス、毒性ガス及びこれらに類するガスの使用が禁止された。1993年に、国際条約はさらに一段と踏み込んで、化学兵器の開発、生産、貯蔵又は使用を禁止し、それらの廃棄を勧告している。核兵器（Nuclear weapons）この兵器の類型には、原子爆弾、水素爆弾（熱核爆弾）及び中性子爆弾が含まれる。1945年に広島及び長崎に投下されたような原子爆弾は、それ自体は国際法によって禁止されてはいないが、他の禁止─実験、製造、貯蔵等の禁止─は受ける。国際司法裁判所人道研究ジャーナルVol. 3, 2014 145