ブックタイトル人道ジャーナル第3号

ページ
18/288

このページは 人道ジャーナル第3号 の電子ブックに掲載されている18ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

ActiBookアプリアイコンActiBookアプリをダウンロード(無償)

  • Available on the Appstore
  • Available on the Google play
  • Available on the Windows Store

概要

人道ジャーナル第3号

The Journal of Humanitarian Studies Vol. 3, 2014際委員会の解釈指針の検討」、『世界法年報』、第31号(2012年)、129-158頁。(11)2013年11月シドニー開催の代表者会議における決議1は、2011年決議1を再確認し、4年間の行動計画を採択した。”Working towards the Elimination of Nuclear Weapons: Four-Year Action Plan”(CD/13/R1), http://www.icrc.org/eng/resources/documents/red-cross-crescent-movement(visited 9 Jan. 2014).(12)本稿掲載2011年決議1訳文は、本稿筆者のそれである。日本赤十字学園日本赤十字国際人道研究センター、『人道研究ジャーナル』、第2巻(2013年)巻末資料掲載の訳文「決議1核廃絶への取り組み」(238-239頁)(訳者名明示はないが、以下、日赤訳という。)は、本稿では使用していない。この日赤訳では、前文第7段落にあるthreat[menace]を「脅威」と訳出している(同238頁)。国際司法裁判所勧告的意見ではthreatとuseを組にして用い、これは国連憲章第2条4項のthreat or use of forceの使用法と同じである。憲章のこの箇所の公定訳は「威嚇」である。加えて、単なる保有にとどまる場合でも核兵器の脅威ということはあるので、脅威の語を用いるとあまりに広い事態を想定することになる。そのため決議1でも「威嚇」の訳語の方がよい。また、日赤訳ではconfirm[confirmer]とconclude[conclure]を訳し分けていない(同)。すなわち、決議のこの前文第7段落を「国際人道法の原則および規則が核兵器に対しても適用されること、そして核兵器の脅威あるいは使用が国際人道法の原則および規則に一般的に反するとした国際司法裁判所の1996年の勧告的意見を想起し」(下線追加)と訳出し、右訳文下線部「とした」によりconfirmとconcludeの二動詞をまとめて訳している。前者は国際司法裁判所勧告的意見主文D項において既存法適用を確認したことに対応し、後者は同E項前段において国際人道法に一般には反する旨述べた箇所に対応する。決議1当該箇所英仏語原文は、勧告的意見をなぞっているから、二動詞を訳し分けた方が原文に近い。(13)日赤訳決議1本文第2項では「区別の原則・予防措置の原則・均衡性の原則」とある(同)。確かにこれらは原則などと日本でもいうが、決議1は、principle[principe]とrule[regle]を使い分けた上でここは全部ruleになっている。そのため訳としては、「規則」とすべきである。日赤訳における最大の問題は、国際人道法規則と「両立しうるような核兵器の使用が想定できないことを確認する」の箇所で(同)、原文は「できない」とまではいっていないように考えられる。ここを「不可能である」とより強く訳出するものもある(『核兵器・核実験モニター』、第389号(2011年)、5頁)。これは重要な問題で、決議1前文にある「一般には」の意義と併せて核兵器使用評価の核心にかかわる。決議1は、敢えてdifficult[peine a]と表現し、使用合法の余地を小にしようとしたと想像されるが、完全非両立断定とは解せない。(14)日赤訳第3項後半おけるexisting commitments and international obligationsが「現存する[ママ]国際的な義務やコミットメント」と英語原文と逆に訳されているが(同)、仏語原文の順番とは対応している。また、「決定を伴う交渉」との訳がなされるが、交渉完了義務は別の表現であらわされており、ここではいわば断固としての意味であるはずである(同)。(15)下田事件判決(原爆判決)、東京地方裁判所、1963年(昭和38年)12月7日判決、『判例時報』第355号(1964年1月1日号)、26頁。但し、日本は、戦争中にはスイスを通じて米に抗議するとともに赤十字国際委員会にも同様の説明をするよう駐スイス日本公使に訓令している。その「米機の新型爆弾による攻撃に対する抗議文」は、既存規則を適用して核攻撃の違法性を指摘する。同、33頁。(16)International Court of Justice, Legality of the Threat or Use of Nuclear Weapons, Advisory Opinion of 8 July 1996(hereinafterICJ Reports 1996), para.105(p.44),(2)D.右勧告的意見評釈として差し当たり以下を参照せよ。国際司法裁判所判例研究会、「判例研究・国際司法裁判所核兵器の威嚇又は使用の合法性」、『国際法外交雑誌』、第99巻3号(2000年)、62-87頁。(17)通常兵器(conventional weapon)とは、核兵器、生物兵器及び化学兵器の大量破壊兵器ではない兵器を一般に指す。(18)米は、第一追加議定書で設けられた規則は、核兵器使用にいかなる影響も与えない旨を了解すると署名時に述べた。英も同議定書で導入された新規則について同様の了解を署名時と批准時に付した。仏は、第一追加議定書は専ら通常兵器に適用があるとしている。D. Schindler and J. Toman, The Laws of Armed Conflicts, A Collection of Conventions, Resolutions andOther Documents, Martinus Nijhoff(2004), pp.800, 815-817.(19)本稿の本文及び注(13)で述べたように、決議本文第2項を国際人道法規則と「両立しうるような核兵器の使用が想定できないことを確認する」との日赤訳に従い断定的な表現とすれば(日赤訳、前掲、238頁)、次項第3項で各国の核兵器使用法的評価の「如何にかかわらず」不使用を確保するという箇所はより理解しにくくなることは否定できない。英仏語原文の単語のみを取り出せば「想定できない」と訳出する余地は全くないわけではなかろうが、文言からして困難で、さらに文脈からしてもそうである。ところで、国際司法裁判所勧告的意見主文E項前段が国際人道法と核兵器使用の非両立性を断言したかの議論もある。E項前段を完全非両立と読む立場からすれば、文言上同一ではないとしても決議1第3項も完全非両立でよいと思われるかもしれないが、決議の場合にあっては、それでは次項第3項との関連性で問題になる。勧告的意見においてはE項前段が完全非両立であってもなくともE項後段との論理的関連性において不都合は発生しない。(20)Statement by Kellenberger, op.cit.(21)何かを核爆発で破壊するのであっても、土木工事や飛来隕石破壊のように武力紛争の一環ではないときには、軍縮法、環境法、海洋法、航空宇宙法や国際人権法のような国際人道法以外の国際法の規律に服する。実験や演習での核兵器使用も同じで、武力紛争がなければ国際人道法の適用も原則的にはない。(22)攻撃(attack)とは、第一追加議定書第49条1項では、「攻勢としてであるか防御としてであるかを問わず、敵に対する暴力行為(acts of violence)」と定義される。(23)国際的武力紛争での合法的人的目標は、戦闘員及び敵対行為(hostilities)に直接参加している間の文民である。第一追加議定書は、戦闘員を積極に定義し、文民を戦闘員以外の者と消極に定義する。16人道研究ジャーナルVol. 3, 2014