ブックタイトル人道ジャーナル第3号

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概要

人道ジャーナル第3号

The Journal of Humanitarian Studies Vol. 3, 2014(24)戦闘員が自らを文民と区別することも区別原則ということがある。これとは異なることを明確にするため単に区別原則というのではなく目標区別原則とここではいう。目標区別原則は慣習法であるが、条約上の表現として、防守無防守の別を前提としたハーグ陸戦条約附属陸戦規則の第25条や、軍事目標主義のみを採用した第一追加議定書の第48条及び第52条2項などがある。(25)前掲注(18)を見よ。(26)害敵方法(methods of warfare)についての規制規則とは、敵人員の殺傷や捕獲に参加する人及び物のとる外見について(奇計と背信行為等の外見にかかわること)並びに人的及び物的の目標選定(目標区別)についての規則をいう。害敵手段(means of warfare)規制規則とは、人的目標を殺傷し物的目標を破壊する手段そのものに関する規則をいう。小銃のように特定兵器が特定目標に指向できるなら、そのように指向させることを害敵方法の規則が要求する。兵器の性格からどうしてもそのような指向ができないのであれば、使用すれば目標区別原則という害敵方法規制規則に常に反する。この場合、当該兵器自体の合法性を判断する害敵手段規制規則の問題となり、手段そのものの使用禁止が導かれる。過度の傷害又無用の苦痛を与えることの禁止原則との関係でも同様の説明をする。害敵手段として禁止されるものの例として毒ガスがある。なお、第一追加議定書第35条1項公定訳では、これを「戦闘の方法及び手段」としてあるが、warfare[guerre]の語は、戦闘以外の行為も含むから「害敵の方法及び手段」の方が適切であったろう。ところで、ハーグ陸戦規則第22条にいう「害敵手段」仏語正文(英語訳文)は、moyens de nuire a l’ennemi(means of injuring the enemy)であった。(27)下田事件判決、前掲、28頁。(28)ICJReports1996,op.cit.,pp.320-321.(29)勧告的意見で国際司法裁判所が引用した英の見解がその典型である。Ibid., paras.90-91(p.39).(30)ハーグ陸戦条約附属陸戦規則第23条(ホ)規定「不必要ノ苦痛ヲ与フヘキ兵器、投射物其ノ他ノ物質ヲ使用スルコト」の禁止については、1907年規則仏語正文は1899年規則と同じで、propre a cause des maux superflusとの文言であった。1899年規則の英語訳文は、of a nature to cause superfluous injuryであるが、1907年規則英語訳文は、calculated tocause unnecessary sufferingとなった。Robertsらの解説では、1899年英語訳文の方がより客観的であったとしている。A. Roberts and R. Guelff, Documents on the Laws of War, 3rd ed., Oxford UP(2000), p.77.第一追加議定書第35条2項や特定通常兵器禁止制限条約前文の「過度の傷害又は無用の苦痛を与える」の仏語正文は、ハーグ陸戦規則と同様で、de naturea causer des maux superflusなのであるが、英語正文は、of a nature to cause superfluous injury or unnecessarysufferingと1899年と1907年の陸戦規則の英語訳文を組み合わせている。(31)下田事件判決、前掲、28-29頁。(32)同、29頁。(33)ICJ Reports 1996, op.cit., para.95(pp.262-263).この箇所は、主文E項前段よりも完全非両立の否定という点をはっきり述べている。赤十字国際委員会は、決議1本文第2項は、むしろ勧告的意見主文E項前段に類似するという。ICRC,“NuclearWeapons and International Law,”Information Note, No.4(2013), p.3.(34)ICJ Reports 1996, op.cit., para.105(p.266),(2)E. E項後段は、自衛の極限状態というのであるから、jus ad bellum上の要素及び切迫性の要素が別段の効果を持つ可能性を示唆する。もっとも、これが違法阻却を念頭に置いていたと断言はできない。むしろ、自衛の極限状態における別規則の存在、又は戦数論と同じで緊急の場合の通常規則の拘束性解除をいっているように考えられる。(35)英は、最も明確にこれを表明し、独や伊の宣言も実質的には同趣旨である。仏は、同議定書第51条8項に付した宣言で同じ効果をもたらそうとしていると考えられる。Schindler and Toman, op.cit., pp.801- 802, 808, 817.(36)ジュネーヴ諸条約公定訳では、同第一条約第46条のそれにあるようにreprisalsが「報復的措置」と訳されている。講学上、復仇(reprisals)と報復(retaliation)は異なるため、この公定訳の不適当さがよく指摘される。(37)International Court of Justice, Case concerning Military and Paramilitary Activities in and against Nicaragua(Nicaragua v.United States of America), Merits, ICJ Reports 1986, pp.103-127.(38)直接の被害国以外による戦時復仇の議論ではないが、他国を助けての核兵器使用の論点については、次のようなものもある。すなわち、国際司法裁判所勧告的意見主文E項後段において「国(a State)」の生存そのものが脅かされる自衛の極限状態が扱われる際にthe Stateではなくてa Stateと不定冠詞が使用されていることから、これは核兵器保有国に限定されず核兵器非保有国も含まれ、そうであれば、核兵器保有国が非保有国たる同盟国の自衛の極限状態にあってこれを助けて核兵器を使用することはできないかという解釈を検討するものもある。C.J. Dunlap, Jr.,“Taming Shiva: ApplyingInternational Law to Nuclear Operations,”Air Force Law Review, Vol.42(1997), p.160.(39)逆に日本がやはり第一追加議定書締約国である敵の文民を違法に殺傷したら、当該の敵は同議定書のため日本文民への戦時復仇はできない。また、米に戦時復仇を向けることは当該違法行為に米が責任を有しないのでできまい。日本(同議定書締約国)と米(同議定書非締約国)が協同して特定の敵(同議定書締約国)と戦っている場合に、日本に向けられた違法行為に米が戦時復仇で応えられるとする一方、日本の違法行為に敵は戦時復仇を日米どちらにもできないというのは均衡を欠く。これは、かつての総加入条項の意義を想起させるような問題である。(40)H. Lauterpachat, ed., Oppenheim’s International Law, Vol.2, 7th ed., Longmans(1952), p.351, n.2.(41)G. Schwarzenberger, The Legality of Nuclear Weapons, Stevens and Sons(1958), p.42.(42)ICJ Reports 1996, op,cit., para.105(p.266),(2)E.(43)Statement by Kellenberger, op.cit.人道研究ジャーナルVol. 3, 2014 17