ブックタイトル人道ジャーナル第3号

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概要

人道ジャーナル第3号

The Journal of Humanitarian Studies Vol. 3, 2014各国の障がい者のパターンは、衛生状態や環境などさまざまな要因の傾向から影響を受ける。そうした要因には、交通事故、自然災害、武力紛争、武器による暴力、栄養状態、薬物乱用の他、保健制度や社会保障制度も含まれる。障がいは、女性、高齢者および貧困世帯においてより多く見られる。低所得国では障がいの発生率が高所得国よりも高くなっており、しかも社会的弱者で一層高くなっている。21世紀初の人権条約であるUNCRPDは、2006年12月に国連総会で採択され、2007年3月に調印、2008年5月に発効した。調印国は158ヵ国にのぼり、うち137ヵ国が批准または加盟している。本条約は、公民権・政治・経済・社会・文化に関わる一連の権利を含む人権の枠組みを示すもので、今後さらに拡大される側面をもっており、国際人道法(IHL)との関連性も盛り込まれている。障がい者を包摂する社会は、さまざまな障壁(身体、情報・コミュニケーション、政策・法令、制度、態度、経済に関わるもの)を撤廃して障がい者を社会に取り込んでいくことによって追求される。本条約は、差別撤廃に取り組み、社会の認識を改め、固定観念や偏見と闘うことを目指している。UNCRPD第11条は、危機的状況や人道上の緊急事態に言及していることから、国際赤十字・赤新月運動にとって特に興味深い条項である。そこでは、国際人道法および国際人権法に基づく義務が確認され、武力紛争、人道上の緊急事態ならびに自然災害といった危機的状況において障がい者の保護と安全確保を保証するためにあらゆる手段が講じられることが求められている。189ヵ国の各国赤十字・赤新月社は公的機関を補助する役割を担っており、社会的弱者にサービスを提供する上での経験と専門知識を備えている。従って、各国政府が締約国としてUNCRPD、特にその11条について報告をおこない履行する際にそれを支援するという、国家レベルの重要な役割を果たすことができる。UNCRPDでは、兵器汚染の生存者とその家族の支援プロセスにおいて人権を尊重することの重要性も強調されている。従って、すべての関係国政府および支援提供国政府に対しては、各政府が対人地雷禁止条約、特定通常兵器禁止条約議定書V、およびクラスター爆弾禁止条約に基づく責務を果たすにあたって十分な情報がUNCRPDから提供されなければならない。3.ビジョン本意見書では、社会参加、社会貢献、意思決定、社会的・経済的福祉の面で障がい者が他の人たちと同等の機会を得て生活の質を向上させることを支援するために国際法の関連規範を普及・履行する立場にある運動の責任が強調されている。国際赤十字・赤新月運動が有している行動力や行動に必要な資源を活用し、障がい者が直面する障壁を撤廃し克服するための、順応性のある総合的なアプローチが意見書のビジョンとして求められている。目標とされているのは、全運動構成員の能力と資源を確立・強化・動員し、障がい者が自ら選択し価値を置く生活を送れるように支援することを念頭に、すべての関連組織と効果的な協働・協力を実現することである。障がい者問題は、生活の社会的・経済的・文化的・政治的側面で平等な権利と機会を誰もが享受できるように、社会全体で変革や解決を図ることが求められる問題である。4.責務国際人道法に従えば、障がい者は負傷者や病人、あるいは特別な配慮と保護を要する一般市民と同じ範疇に入るといえる。また、多くの場合障がい者が経済的・社会的・文化的活動に参加する機会を奪われていることを踏まえ、多くの赤十字・赤新月社が、公平と人道とともに脆弱性に重点を置く国際赤十字・赤新月社連盟(連盟)の戦略に基づいて、障がい者のニーズに応える最善の方法を模索してきた。人道研究ジャーナルVol. 3, 2014 277