ブックタイトル人道ジャーナル第3号

ページ
39/288

このページは 人道ジャーナル第3号 の電子ブックに掲載されている39ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

ActiBookアプリアイコンActiBookアプリをダウンロード(無償)

  • Available on the Appstore
  • Available on the Google play
  • Available on the Windows Store

概要

人道ジャーナル第3号

The Journal of Humanitarian Studies Vol. 3, 2014かがでしょうか。喜んで招待状を送付いたします。また、このほどベルリンの書店「メイエルミューレル社」に申し込まれた負傷軍人救護国際常置委員会事務局出版の書籍類のほか、私の自著の書籍類も日本政府に対し送付しても差し支えありませんので、同社に申し入れておきます。さらに、博愛社でも同様の希望があれば、併せて同社に申し入れます。1884年2月18日ジュネーブ府赤十字国際委員会ギュスタフ・モワニエベルリン府バロンド・シーボルト氏へこれに対して、アレキサンダーはモワニエに(1884年)4月9日付で書簡を送付した。その内容はつぎのとおりである。2月18日付の書簡を拝受して、心より御礼申し上げます。この手紙の写しを東京の博愛社副総裁佐野代議士に送りました。佐野氏には時々、博愛社の進捗を報告するようお願いしてあります。もちろん、その報告は貴殿とも共有させていただきます。すでに、日本政府は基本的にジュネーブ条約の人道的諸原則を採用し、「軍人必携の書」に明記されています。さらに数年に渡ってジュネーブ条約への正式加盟を真剣に模索し、この考えは帝国政府の相当数の人たちに、強く支持されてきています。そして、あまり遠くない時点で、外交的な展開が取り進められるかもしれません。赤十字国際委員会が正式に博愛社を承認できる時が来ることを待ちながら、貴殿から時々ご忠告などを頂戴できますよう切にお願い申し上げます。貴殿とベルリン出版社(メイエルミューレル社)との書簡を拝読し、書籍類を申し込んだには、日本政府ではなく、博愛社であることをご指摘しておきます。そして、貴殿が出版された諸資料および戦争法規マニュアルを博愛社にお送りいただければ幸いです。また、もし博愛社がジュネーブで開かれる赤十字国際会議への招待状をいただければ、オブザーバー的な立場であったとしても、幸甚に存ずることは疑いがありません。しかしながら、日本との距離のことを考えると、必要な準備を取り進めるための時間がないことが懸念されます。モワニエ委員長(総裁)様、押しつけがましい私の考えを申し上げましたことお許しください。その後、1884年(明治17年)9月22日付でアレキサンダーから佐野のもとに連絡があり、ジュネーブで9月1日から6日まで開かれた第3回赤十字国際会議にICRCの招待を受けて、陸軍軍医監の橋本綱常とともに参列した。会議の議事録の写しをお送りするとともに、報告書は手に入り次第送付するとのことであった。さらに、アレキサンダーは日本政府がジュネーブ条約に加入すれば、条約に従って、社名、標章も赤十字に合わせる必要があることを、大山、橋本の2氏に説明するとともに、井上馨氏にも報告した。「1864年のジュネーブ条約」に加入する手続きは容易にでき、その承認項目はすでにご存じだとは思いますが、報告します、とある。この条約の締結や思想の普及によって、文明国での負傷者の対応は大いに改善されてきているが、東洋での対応は、いまだ改善されていない。政府を援助する団体も各国で誕生し、中にはICRCと連絡を取り合うところもある。だが、ジュネーブ条約未加盟国または有志者協会を設けた国でも、政府や協会が条約を承認しなければ、赤十字として認められない。また、赤十字の標章は宗教上に関係するものではなく、すべての国々に慈しみを表す印として用いており、日本も赤十字標章を採用して条約を守れば、博愛社も赤十字として承認されるであろう。以上がジュネーブや他の地域で視察した一部始終である。博愛社のために考えるに、結局、日本政府がジュネーブ条約に加入すれば、その目的は達せられると思う。早く日本政府に条約加盟を促すことが重要で、彼もそれを望んでいる旨の連絡をしてきた。政府にジュネーブ条約加盟の建議書1884年(明治17年)11月25日に開催された社員総会で、佐野は会場に集った社員にアレキサンダーから送付されてきた書簡の内容を紹介した。さらに政府に対してジュネーブ条約加盟の建議書提出を提案、審議した結果、満場一致で承認された。早速、佐野は社員総会で承認された条約加盟の建議書を柴田承桂、アレキサンダー・シーボルトが収集した資料などをもとに草定し、同年12月に日本政府に提出した。建議書の要約はつぎのとおりである。人道研究ジャーナルVol. 3, 2014 37