ブックタイトル人道ジャーナル第3号

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概要

人道ジャーナル第3号

The Journal of Humanitarian Studies Vol. 3, 2014赤十字国際委員会(以下「ICRC」)は普及の対象とその担い手を次のように分類している。普及の対象普及の主要な担い手普及の二次的な担い手軍隊政府各国赤十字社・ICRC各国赤十字社各国赤十字社ICRC・IFRC行政政府各国赤十字社・ICRC大学各国赤十字社ICRC学校各国赤十字社ICRC・IFRC医療職各国赤十字社ICRC・IFRCジャーナリスト・メディア政府・各国赤十字社ICRC市民一般政府・各国赤十字社ICRCここでは、軍隊、赤十字、教育(とりわけ青少年に対するそれ)の3つの文脈に焦点を当て、それぞれの普及の特質を俯瞰し、上述の普及の「動機」を探究してみたい。普及の文脈を探究する・軍隊における普及第一追加議定書は、軍隊における人道法普及の主要な責任は指揮官にあり(P1.87条(2))、法律顧問はそれを助言することができる(P1.82条)としている。そこで、指揮官とはまた「別に」設置された法律顧問に期待される資質、役割を考察することにより、軍隊における普及の特質を垣間見ることができるのではないか。法律顧問については、「締約国は…利用することができるようにする」と条文が定めているように、その利用は義務付けられていない。こうした緩やかな規定が置かれた背景には、同条の起草過程において「法律顧問の利用を義務付けると、法律顧問の助言のない上官命令の実効性ないし信頼性が低減してしまい、軍事作戦の遂行に支障をきたすこと」や、「法律顧問の地位が強調されることで、法的事項に対する指揮官の責任感が損なわれること」といった懸念が示されたことにある。換言すれば、軍隊構成員(戦闘員)の指揮官(上官)ではない法律顧問には、裁判官のように軍隊の行為規範を規律監督する振る舞いではなく、むしろ法の適切な履行確保のため、違反行為の予防的な助言者としての役割が期待される。その意味で、軍隊組織内における法律顧問への信頼性が醸成されていなければ、その助言の実効的な機能は期待できないだろう。軍隊における普及テキストの特質とは何か。例えば第一追加議定書では締約国が攻撃の際に考慮すべき原則として、「予期される具体的かつ直接的な軍事的利益との比較において、巻き添えによる文民の死亡、文民の傷害、民用物の損傷又はこれらの複合した事態を過度に引き起こすことが予測される攻撃」を禁止する均衡性の原則(P1.51.5(b)他)を義務付けているが、法律顧問はこれをいかにして普及ないし教育、または助言するのだろうか。同原則の判断は、ある攻撃の帰結として生じた多数の付随的損害の発生という「結果」をもって考慮されるのではなく、その付随的損害を戦闘員が「過度のものとはみなさなかった」という「比較」により導かれるように、その状況下での軍事作戦への理解なしに、適切な助言、判断を下すことは到底不可能であるように思われる。さらに軍事目標主義(何が軍事目標なのか)や新兵器の採用における人道法上の合法性の判断(その兵器のいかなる性質が人道法上の義務に抵触するのか)といった戦闘手段・方法を規律する人道人道研究ジャーナルVol. 3, 2014 41