ブックタイトル人道ジャーナル第3号

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人道ジャーナル第3号

The Journal of Humanitarian Studies Vol. 3, 2014南スーダン共和国ミッション(UNMISS)における自衛隊の活動─オールジャパンによる取組みと民軍連携モデル─GSDF’s Activities in the United Nations Mission in theRepublic of South Sudan(UNMISS)-Efforts of All Japan and Role Sharing Model inCivil-Military Coordination-陸上自衛隊研究本部2等陸佐浦上法久はじめに近年の国連平和維持活動(以下「国連PKO」)では、破綻国家や脆弱国家といわれるような国々において文民部門と軍事部門とを統合した組織形態をとるのが趨勢であり、これは「統合ミッション」と言われる1。現在、南スーダン等で展開している国連PKOも統合ミッションである。統合ミッションには、治安・政治・開発等の各分野の活動を共通の目的達成のため、政策形成・活動計画の策定と実施とを一元的な指揮・統制系統のなかで行い、資源の効率的な配分と活動効果の向上を実現する狙いがある。しかし、ニューホライズン・ペーパーが指摘するように、平和構築の任務でPKO部隊が遂行を期待される範囲が不明瞭であり、そのコンセンサスはほとんど存在しない2。平和構築の基盤的定義は、ブトロス・ガリ(Boutros Ghali)が挙げたものからブラヒミ報告書など類似の文書がある。2008年の『国連平和維持活動―原則と指針―』3は、平和構築も含むPKOにおける軍事要員の行動原則を示したもので、国連平和維持局(DPKO)による明示化の努力といえる。ただ、この原則レベルの話と現実との間にはかなりの格差が存在する。というのも、原野にPKO部隊が作戦上の必要性から道路を整備したとしても、一旦作られた道路は周辺住民も利用し、NGO等が物資輸送に使い、周辺には住民が民家を建て始める。国連PKOが開発目的で道路を整備したのではなくても、住民らも使用できる公共財となり得る。国連PKOと開発を厳密に棲み分けるのは難しい側面がある。国連PKOの組織と活動が統合の趨勢にあるなか、その狙いを実現する運用原則として一定のガイドラインは示されているが、現地活動において国連PKOと開発との棲み分け、軍部隊と文民組織の役割を整理するといった標準化はなされていない。こうした問題意識の下、本論では国連の民軍連携原則の部隊活動への適用を焦点に当てて事例研究を行い、民軍間で役割の棲み分けを標準化すること可能であることを明らかにする。そのため、まず国連南スーダン共和国ミッション(United Nations Mission in the Republic of South Sudan: UNMISS)の活動の現状と特徴を概観する。次いで、日本隊の事例から国連民軍連携(UN-CIMIC)の原則の現地活動への適用を検証し、国連PKOにおける民軍間の役割の棲み分けを実証し、どのような標準化が可能かを明らかにする。1南スーダンのPKO活動?南スーダンの統治の現状南スーダンの国内問題には、反武装勢力の活動、家畜の強奪、水の利権をめぐる部族間衝突や帰還民問題等がある。治安維持は、当面最も重要な課題の一つである4。南スーダン国内には現時点でもデビッド・ヤウヤウ(DebidYau-Yau)など複数の反政府武装勢力が活動しており、南スーダン政府はこうした武装勢力の鎮圧・武装解除・統合を完了できていない。警察組織には一般の警察の他、交通・港湾・空港警察などが存在するが、要員の職務能力が低く汚職も見られる。政府軍の地位にあるスーダン人民解放軍(Sudan People’s Liberation Army: SPLA)は師団・旅団といった編制をとっているが、師団長や旅団長は隷下部隊の兵士数、保有装備品の種類や数を把握で人道研究ジャーナルVol. 3, 2014 45