ブックタイトル人道ジャーナル第3号

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概要

人道ジャーナル第3号

The Journal of Humanitarian Studies Vol. 3, 2014きていない。実際、工兵旅団といっても重機を保有しておらず、建設や土木技術を持つ専門要員もいなかった5。こうした実情からは、軍事的な作戦行動を行う能力は低いものと思われた。また、駐屯地に武器庫がないなど武器の保管・管理体制が不十分な状態である。社会インフラに関しては、国内の基幹道路が整備されておらず、アスファルト道路はジュバ周辺と一部地方を除き200km程度である6。州を結ぶ幹線道路は未舗装で、雨季には冠水して車両による地方へのアクセスができず、食糧や生活物資の輸送・供給が困難となる。また、電力、通信、水道、病院、学校など社会構造の全ての分野においてインフラが著しく不足していることに加え、基幹となる産業がない。このように、領域内で政府による実効的な統治がまだ確立されていない状態にあるといえる。?UNMISSの活動と特徴UNMISSは2011(平成23)年7月、安保理決議1996号によって国連スーダン派遣団(United NationsMission in Sudan: UNMIS)の後継ミッションとして設立された。UNMISは2005年1月にスーダン政府とスーダン人民解放運動・軍(SPLM/A)との間で南北包括和平合意(Comprehensive Peace Agreement: CPA)が署名されたことを受けて2005(平成17)年3月、安保理決議1590号によって設立された。UNMISはCPA履行を支援することが主たる目的であり、主なマンデートは1 CPAの実施の監視・検証と違反の調査、2軍や武装グループの移動・再配置の監視、3 DDR、5文民警察支援、6法の支配の確立、司法システムの強化などガバナンスの向上、7選挙、国民投票準備に対する技術的支援、8難民等の帰還促進等であった。後継として設立されたUNMISSは国連憲章第7章に基づいて行動し、[Ⅰ]和平の強化のための支援、[Ⅱ]文民の保護、[Ⅲ]治安部門改革を通じて、長期的な国造り(state-building)と経済的発展を促進することとされた。[Ⅰ]和平の強化の支援のなかには、1政治的移行、統治及び国の政策案出を含め南スーダン政府に対する周旋、助言及び支援の提供、2憲法上の過程に関する南スーダン政府への助言及び支援、3独立したメディアの設立促進などがある。[Ⅱ]文民の保護には、1情報収集・監視・検証・早期警戒を伴う早期警戒能力の創設と履行、2紛争の危険が高い地域における展開による暴力の抑止、南スーダン政府が安全を提供していない場合に、身体的暴力の差し迫った脅威のもとにある文民の保護、3国連及び人道支援要員に対する安全、設備・装備の提供及び人道支援に資する治安条件の創出などがある。[Ⅲ]治安部門改革には、1法の支配及び司法部門改革の支援、2 DDRの策定及び実施における南スーダン政府の支援が盛り込まれている。また、文民の保護を実行するため、その能力と部隊の展開している地域を限度に、必要なあらゆる手段の行使を許可するとした武力行使の権限が付与されている。このように、UNMISがCPAの履行を支援することを主たる目的としていたのに対し、UNMISSは治安維持と平和構築を通じた国造り支援となっている。国内の幹線道路が脆弱で、地方へのアクセスが容易でないため、UNMISSは活動の重点を地方州に置いている7。PKO要員が継続的に活動できるよう各州の郡(county)に郡支援拠点(County SupportBase: CSB)の設置を進めている。各CSBに歩兵・施設部隊や文民部門の一部を分散配置し、継続的に現地情報を把握する。情勢の変化に応じて早期警報を発出して紛争の発生を未然に抑えたり、万一、紛争が発生した場合には部隊の展開のため活用する。文民部門もCSBを拠点として活動し、郡ベースで国造り(平和構築)を進めていく構想である。UNMISSは南スーダン全域で2016年までに35のCSBの整備を予定している8。2013(平成25)年4月時点で、13が稼働状態にあり9、そのうち8か所には部隊等が展開済みである10。2013-14年度は更に7個CSBを稼働状態にする計画である11。2統合ミッションの特徴と民軍連携の原則?統合ミッションの特徴46人道研究ジャーナルVol. 3, 2014