ブックタイトル人道ジャーナル第3号

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概要

人道ジャーナル第3号

The Journal of Humanitarian Studies Vol. 3, 2014ア国連民軍連携(UN-CIMIC)の原則統合ミッションが目的を達成するため、一元的な指揮・統制系統により資源の効率的な配分と各分野の活動効果を実現するには、文民アクターと軍部隊との間で実効的な調整や協力が必要である。このため、国連民軍連携(UN-CIMIC)12は、統合ミッションの狙いを実現するうえで非常に重要な機能といえる。2003年のMCDAガイドラインでは、文民組織が軍部隊を使用する際の原則が述べられている。その第1は、まず文民組織にとって軍事資産(asset)の活用が、他に代替できる措置がない場合の「最後の手段(last resort)」とされていることである13。ここで言われる「最後の手段」とは、文民組織が機能・装備など能力的な限界によって活動できない場合(where there is no comparable civilian alternative)の措置として、その役割を担うため軍事組織を活用することである。これは文民組織の機能・能力の限界や欠落を支援する「非代替性」を意味すると解される。非代替性は戦略・オペレーション・戦術(現場)の各レベルを問わず、文民組織が保有しない機能・装備・能力を軍事部門が有する場合に、軍部隊にしかできない活動かを判断する基準となる。ここには人道支援組織から軍部隊に現地レベルでアドホックな支援を求められるものから、国連機関と国連PKOとで一定のプロジェクトの計画策定から実施の各段階でプロセスを共有し、綿密な調整のもとに軍部隊のアセットを活用するオペレーショナル・レベルまで含まれる。第2に、軍の使用は緊急の人道ニーズ(humanitarian needs)への支援に使用すべきとされている1 4。「緊急性」とは、紛争・飢餓・疾病等によって現地住民等が切迫した危機的状態にあり、迅速な支援が必要とされることである。軍部隊の活用によって危機的状態を改善し、あるいは人命の救助につながると判断できる場合などがその例である。緊急の人道ニーズが広範な地域で生起し、文民組織だけの能力では支援を届けることができないような場合に、軍部隊の人的資源、航空機や車両等のアセットを活用した対応が求められる。期待される人道的なニーズの緊急性が高い場合、その対応が軍部隊の役割として期待される。イ活動に求められる即効性(quick impact)国連民軍調整(UN-CIMIC)政策指示書によれば、現地政府や現地住民などのコミュニティ支援に即効事業(Quick Impact Project: QIP、以下「QIP」)を使用して、現地で国際機関や開発助機関の支援が届かない地域や分野でインフラ整備等を行い、文民アクターによる支援ギャップを埋めるために活動するとされている15。開発援助機関や国連機関等が中長期的な計画をもって活動するのに対し、国連PKOが喫緊のニーズに対応する役割を果たすとすれば、その活動には「即効性」が求められよう。これは開発とPKOの性質上、最も異なる点といえる。PKOには即効性を発揮することで開発への橋渡しが期待されるのであり、そのために多様なニーズを選択的に行う必要があるといえよう。同時に、軍事部門によるQIPの使用には、現地の「民心の獲得」という意図がある。これは支援のギャップによって、現地政府や国連に対する住民の不満や信用の喪失などから、地域が再び不安定化することを避ける狙いによるものである16。しかし、どのような内容(質)・規模(量)の案件を形成するかは、実際には各軍部隊の判断に委ねられている。現地の喫緊のニーズを把握して、その地域に根を張って活動している文民アクターとの調整を経て案件化するプロセスが標準化されていないため、軍部隊によってニーズ選択の判断基準も異なり、支援の質にもばらつきが出ることになる。したがって、戦術(現地)レベルでの役割の棲み分けには、一定の標準化が求められるのである。?UNMISSの活動の調整枠み統合ミッションでは、多様なマンデートを遂行するうえで、様々な文民アクターのニーズを収集・整理してタスク化する調整機能がシステムとして整備されている必要がある。文民組織からの多様なニーズを人道研究ジャーナルVol. 3, 2014 47