ブックタイトル人道ジャーナル第3号

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概要

人道ジャーナル第3号

The Journal of Humanitarian Studies Vol. 3, 2014な条約改正は、全て前述の二つの原則(中立と公平)に依拠していて、今日の人道支援活動の基盤となっています。ここからは、150年の歴史の中でジュネーブ条約が果たした役割と今現在取り組んでいる問題について触れたいと思います。歴史の観点からすると、新たな形態の戦争が勃発するたびに、国際人道法との整合性を明確にすることが課題であったといえます。戦争は、新しい兵器や戦闘法を用いて交戦国同士が互いに相手を脅かすことにしのぎを削るものであって、つねにその様相は変化し発展してきました。そのため、条約が時代に追いつかず、人道法との関連性が希薄になるのではないかという危惧がありました。しかし、人道法の原則は時代を超えて引き継がれ、新たな形態の戦争にも適合してきたことも事実です。人道法を尊重したいという意思が働いたからこそでしょう。また、新兵器は既存の条約を遵守したものでなければならず、その逆はないということは広く認められているところです。この解釈は、核兵器、無人兵器、殺人ロボット、自爆行為やサイバー戦争にも適用されます。そして最後に、人道法を形作るのは、条約ではなく各国の意思を反映した国際的慣習であるということも、人道法が様々な戦争に対応してこれた理由でしょう。今直面している課題としては、ジュネーブ条約の根源を否定するような事態が生じているということです。アフガニスタン、ソマリア、シリアなどでは、軍、民間を問わず医療施設や医療従事者が攻撃の直接的な被害を受けています。これは、交戦相手や一般市民が医療支援を受けられないようにして、恐怖を蔓延させることが目的です。人道支援や医療支援が必要な弱い立場にある人と、それ以外の人を選別したうえで、人道支援従事者を攻撃する事象も増加しています。医療スタッフと各国赤十字社・赤新月社の職員が攻撃対象となっているのです。しかし、中立と公平という基本原則を踏みにじれば、代償は高くつくということは歴史が証明しています。結果としてもたらされるのは、無制限の暴力と全面戦争であり、破壊と言葉では表せないほどの苦しみだけです。ジュネーブ条約誕生150年周年というこの機会に、国際社会が1864年のジュネーブ条約と国際人道法で約束されている医療活動の公平と中立の原則を再認識することを期待しています。人道研究ジャーナルVol. 3, 2014 3