ブックタイトル人道ジャーナル第3号

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概要

人道ジャーナル第3号

The Journal of Humanitarian Studies Vol. 3, 2014タスク化する調整機能は、民軍合同での調整部署が担うべきだが、UNMISS司令部ではこうした民軍合同の調整組織は編成されていない。軍事部門司令部内で民軍連携を所掌するのはJ-9であるが、軍事部門の作戦行動に関わる内容が主体で、UNMISSのミッション全体の活動を組み立てるレベルの調整を担うものではなく、ミッション全体での案件調整システムが十分ではない。日本隊がUNMISS内外との文民組織との調整を通じて活動を組み立てる役割を果たすとすれば、そこにはUNMISSが統合ミッションとして本来保有すべき民軍連携機能を補完する側面があるといえる。3日本隊の活動日本は2012(平成24)年1月以降、道路等のインフラ整備等を行う陸上自衛隊の施設部隊(最大約330名)及び同部隊の活動を支援するため、国連、現地政府機関等との調整を行う陸上自衛隊の部隊(最大約40名)(以下、「日本隊」)を派遣している17。同年4月以降、日本隊は国連施設の整備の他、国連機関や現地政府、NGO等の文民アクターと連携して本格的な活動を開始した。日本隊の活動の特徴は、第1に施設(エンジニアリング)ニーズを収集し、UNMISS司令部との調整を経て日本隊のタスクとする案件形成機能の強化、第2に政府開発援助(ODA)とPKOの連携、第3に国際機関や非政府組織(NGO)との連携があげられる。?案件形成機能の強化国連PKOでは現地のニーズをPKO部隊のタスクとして実施してマンデートの履行へとつなげていくことが求められる。日本隊は現場で活動する様々な文民アクターの施設ニーズを収集し、プライオリティを整理してUNMISS司令部に提示し、UNMISSから活動指図(tasking order「タスク・オーダー」)を受け、施設隊が作業をする調整枠組みを確立して活動を進めている。日本隊の案件形成機能には、UNMISS司令部のタスク策定のための調整力を補完する意味があるといえる。日本隊の案件形成部署には、活動調整を担任する自衛官(民生協力幹部)、内局の政策補佐官及び技官が配置されている。3者はチームで行動し、民生協力幹部は施設活動を案件化する調整業務を担い、政策補佐官と技官はそれぞれ政策的及び技術的な観点から、各ニーズについて日本隊による実行の可能性を検討・評価し、ニーズをタスク化へとつなげていく体制となっている。民生協力幹部・政策補佐官・技官がチームとなって国連PKOにおいて案件形成に当たるのは、日本のPKO活動において初の取組である。この体制によって、案件形成を部隊が自ら行うことにより、日本隊は国連PKOミッションの活動を組み立てていくプロセスに主体的に関わるようになった。実際に日本隊のタスクとした活動例のいくつかを挙げると以下の通りである。?ODAとPKOの連携ア草の根無償資金の活用「ジュバ・ナバリ地区コミュニティ道路整備」ナバリ道は国連宿営地に隣接し、ジュバ市北部地域を南北に通るコミュニティ道路である。路面は陥没によって車両通行が困難なうえ排水路も未整備である。少量の雨でも地区全体が冠水し、住民は市場へのアクセスや子供達の通学等が困難となる状態にあった。地域の泥寧化によって生活環境が悪化し、そこで生活する女性や子供など社会的弱者にとって負担となり、社会生活の阻害や健康被害の要因となっていた。地域の冠水を解消するには排水の改善が必要で、住民にとって喫緊のニーズとして現地政府に寄せられていた。元々、ナバリ道はジュバ都市整備計画のなかでアスファルト舗装整備が行われる予定とされていた。しかし、南スーダン政府の予算不足から道路・側溝整備が実現するまで、少なくとも数年以上かかる見込みであった。日本隊はこうした現地のニーズを把握し、草の根無償とPKOの連携による案件化を図った。外務省・経済協力担当者や地元政府インフラ省担当者を交えて協議や現地確認を重ね、道路・側溝整備に要1する費用見積、施工計画案を策定して州政府から外務省・現地政府連絡事務所8へ草の根無償資金の48人道研究ジャーナルVol. 3, 2014