ブックタイトル人道ジャーナル第3号

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概要

人道ジャーナル第3号

The Journal of Humanitarian Studies Vol. 3, 2014UNICEFは南スーダン国内の小学校や幼稚園などの教育支援を担当しており、学校の教室など施設の建設支援、教員の育成、教育カリキュラムの他、特に子供を対象とした栄養管理や人権保護の分野で活動している。南スーダンの国造り支援では開発がジュバに集中し、アスファルト舗装化が逐次進んでいる状況にある。市内の交通量も増加し、UNICEFは学校周辺の通学経路に横断歩道を設置することで、通学時の児童の安全向上を図りたいと考えていた。日本隊はUNICEFのニーズをゼブラ・プロジェクトとして、UNICEF及び現地州政府インフラ省との協働の案件として実施することにした。施工に際して、横断歩道の幅などの規格をインフラ省に照会したが、南スーダンには横断歩道が一つもなく、州政府の担当者も該当する法律があるのかどうか分からなかった。UNICEFの調査によっても該当する法律が見当たらず、日本隊では日本の規格で横断歩道を設置するよう計画し、州政府から同意を得て、UNICEFとの共同案件として実施した。本案件は地元の小学校生徒らも塗装作業に参加する形で進め、現地政府及び住民からも評価を得た。エ非政府組織(NGO)国連PKOと文民組織との連携の一つに非政府組織(NGO)との連携がある。日本隊の主たる活動はインフラ整備等の施設作業であるが、南スーダンにおいては日本のNGO「日本紛争予防センター(JCCP)」との連携を行った。JCCPはジュバを拠点としてストリート・チルドレンに対する啓蒙活動、ホテルやレストランで勤務できる調理師、ウェイターを育成する職業訓練を実施している。調理師育成プログラムのなかで、日本料理の調理実習を日本隊で行えないかという話が持ち上がり、「衛生指導」として3名の南スーダン人に対して約3週間、日本隊宿営地の厨房で調理実習を行った。調理指導には日本隊の厨房要員があたり、調理環境指導や衛生指導を衛生要員が行った。これは、本体業務が施設活動であっても他の分野での文民組織との連携が可能であることの事例である。4国連PKOにおける軍部隊の役割?民軍連携の原則―非代替性と緊急性―の適用ジュバ・ナバリ地区のコミュニティ道路整備、ジュバ市浄水場の拡張支援、帰還民収容施設の建設などは、文民組織が持っていない自衛隊のアセットを活用して実現したものである。路面整備・建造物解体・施設の建設は、油圧ショベル、グレーダー、ロードローラー等の専用の機械力と設計・施工能力を必要とした。日本隊はこれらのアセットを文民組織にニーズに応じて提供した。JICAやUNHCR等の文民組織が活動を行ううえで機能・装備の能力的な限界を日本隊が補完する役割を果たしたものであり、非代替性の原則を適用した事例といえるであろう。開発援助や人道支援活動は中長期的な計画をもって進められるのが一般的である。大型インフラの建設やキャパシティ・ビルディングも一定の成果が出るには、長い時間と多大な労力と費用を要する。開発や人道支援を行うための環境や条件を創出するには、限定的とはいえ国連PKOは武力行使を伴うオペレーションを行う可能性がある。開発援助や人道支援活動を進めるうえで治安の安定が必要な条件だからである。治安維持にあたる際、当事国政府や現地住民の理解・支持・協力は不可欠である。現地住民らの支持等を獲得するため、現地の喫緊のニーズを目に見える形で満たす即効性のある活動が求められるのである。国連QIPに関して、UN-CIMIC政策指示書は、文民組織と協働あるいは調整プロセスを通じた支援を行うべきとしている。文民組織も現地の全てのニーズに対応できるわけではないので、軍部隊が文民組織の活動を補完できる部分を明らかにする必要がある。多くは住民の生活に最小限必要な基本的なニーズ(basic human needs)である場合が多く、かつ、社会的弱者とされる女性や子供への影響を排除・解消するようなニーズへの対応を求められるケースもあり、国連PKOのマンデートとの整合は容易である。日本隊の活動はこうしたニーズへの対応であり、緊急性の原則が適用されていると評価できよう。50人道研究ジャーナルVol. 3, 2014