ブックタイトル人道ジャーナル第3号

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概要

人道ジャーナル第3号

The Journal of Humanitarian Studies Vol. 3, 2014(5赤十字社あてに寄贈されています。一方、日本赤十字社は、北朝鮮の洪水や食料不足による被災者支援)のため救援資金・物品を援助し、さらに国際赤十字のメンバーとして救援要員(日本赤十字社本社職員)を北朝鮮に派遣しました。このほか長年にわたり赤十字の基本的な事業である行方不明者の安否調査事業に取り組んできました。こうした協力・連携事業のなかでも、とりわけ北朝鮮への帰還事業は、対象者がほとんど全国にわたるなど、その規模と20年にわたる実施期間の長さから、戦後、日本赤十字社が行った大きな事業のひとつでありました。在日朝鮮人帰還事業もとより、すべての人が基本的人権として自由に居住地を選択できる権利をもっていることは世界人権宣言等でも認められています。1957年(昭和32年)インドのニューデリーで開催された第19回赤十字国際会議は、戦争、内乱等の結果、多数の大人や子どもがその家庭や家族から引き離されている状況に鑑み、あらゆる手段を講じて、これらの人々へ支援を行うとともに、人々がその意思に従い離散した家族との再会が果たせるよう各国の赤十字社と政府に対して要請しました。この要請に基づき、1959年(昭和34年)1月に開かれた日本赤十字社理事会は、「一部在日朝鮮人が今なおその希望に基づいて故国へ帰還できない事態を憂慮し、居住地の選択又は故国への帰還の自由は、その個人にのみ属する基本的人権であるにより、この問題を政治問題と切り離し、純人道的見地から緊急解決する必要を再認識する。従ってその方法においても、政治問題に巻き込まれないよう細心の注意を要するものと認める」と決議しています。すなわち、朝鮮半島が南北に二分されているという特殊な政治状況、さらに北朝鮮とわが国の間には未だ国交がないということなどに鑑み、この問題の対応にあたっては、本人が自由に帰還の意思を表明し、そのことが国際的に認められるシステムを作ることが必要であることを訴えたのです。この結果、在日朝鮮人の帰還事業は、基本的人権に基づく居住地選択の自由という国際通念に基づき、中立機関である赤十字国際委員会(ICRC)の必要な仲介を得て、「個人の自由意思」を最大限尊重した「人道問題」として実施されることとなりました。このため、日本赤十字社は日本政府との綿密な協議を経て日朝赤十字社(会)間の協定を結び、この協定に基づき帰還事業を実施することになったのです。日本政府は同年2月、「帰還問題は基本的人権に基づく居住地選択の自由という国際通念に基づき処理する」旨閣議了解し、日本赤十字社にその帰還業務の実施を委託しました。日本赤十字社は政府からの委託を受けて、前述の第19回赤十字国際会議決議20(離散家族の再会実現)に基づき日朝赤十字間の協定(1959年8月13日インドのカルカッタにおいて日本赤十字社と朝鮮赤十字会との間で調印された「在日朝鮮人の朝鮮民主主義人民共和国帰還に関する協定」)により、北朝鮮への帰還事業を開始したのです。この帰還業務を通じて1959年(昭和34年12月)から1984年(昭和59年7月)までの間、中断を挟みながらも、1971年(昭和34年)2月5日ソ連のモスクワで朝鮮赤十字会との間で調印された「帰還未了者の帰還に関する暫定措置の合意書」並びに「今後新たに帰還を希望する者の帰還方法に関する会談要録」に基づき、計93,340名の在日朝鮮人とその家族の方々が計187回の配船により北朝鮮への帰還を果たしました。自由意思の尊重と確認(6事業実施期間中、日本赤十字社は帰国希望者に対して帰還に関する個人の自由意思の表示)を求めており、各市町村の帰還申請窓口、日本赤十字社新潟帰還センターへの入所前、そして「帰還船」への乗船直前と、少なくとも計3回にわたり本人の自由意思の確認を実施しました。特に新潟帰還センター到着後は赤十字国際員会(ICRC)の代表の立会いによる意思確認を行い、その際、日本に残ることも、北朝鮮あるいは韓国へ帰ることも、さらに、先方が受け入れる限り、その他どこの国へ行くことも自由である旨を説明し、16歳(7以上の帰還希望者)に対し一人ひとりの自由意思の確認を徹底しました。人道研究ジャーナルVol. 3, 2014 55