ブックタイトル人道ジャーナル第3号

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概要

人道ジャーナル第3号

The Journal of Humanitarian Studies Vol. 3, 2014また、帰還後の帰還者の生活については、日朝両赤十字間で調印された帰還協定のなかで、北朝鮮側が生活安定のため住宅、職業、就学等、帰国後のすべてを保障する旨規定されていました。関連して、日本赤十字社は日本に残った在日朝鮮人の家族や日本人妻の家族からの要請に基づき、朝鮮赤十字会を通じて安否調査を長年にわたり実施しています。また、一方で北朝鮮へ渡った帰還者からの直接の要請に基づき、日本赤十字社は日本にいる家族に対する安否調査も併せて実施してきました。日本人配偶者の故郷訪問事業日本赤十字社が1997年(平成9年)11月、翌98年(平成10年)1月、一時中断を挟んで2000年(平成12年)9月の計3回にわたり実施した日本人配偶者の故郷訪問事業も、北朝鮮への帰還事業と同様な考え方、すなわち、国交のない国と国のあいだで、家族が離ればなれになっている状況、いわゆる離散家族の面会促進という人道的立場から行われました。日本赤十字社は未だに国交がない日朝間の政治状況の中で、当面、両国民の自由往来が早期に望めないなかにあって離散家族の再会のためには、できるだけ広く人道的な機会を確保することが必要であると考えておりましたが、ことの起こりは、1997年(平成9年)8月21日、22日の両日に日朝両国の政府間で行われた国交正常化交渉再開のための両国審議官級の予備会談で、北朝鮮在住の日本人配偶者の故郷訪問を早期に実現することが必要である旨が日朝両国間で合意されたことによります。日本政府は、9月2日の閣議了解をもとに、翌日の9月3日、日本赤十字社に対して政府の委託事業として故郷訪問の受け入れ準備及び実施を依頼してきました。その依頼のなかに、「日朝双方の赤十字社が、必要に応じて当局の参加を得て、連絡協議会を設置し、今後の日本人配偶者の故郷訪問の実現のための準備・協議及び北朝鮮内の日本人の安否調査等につき、緊密に協力していくことで意見の一致を見たところであります」と上記予備会談での合意内容が記載されていました。日朝赤十字会談日本人配偶者の故郷訪問事業の実施に伴い、日朝赤十字会談は1997年(平成9年)9月から2002年(平成(814年)8月まで計6回にわたり北京およびピョンヤンで開催され、両赤十字社の共通の人道問題)として下記の事項について協議をしてきました。1.日本人配偶者(日本人妻)の故郷訪問2.残留日本人(未帰還者)の消息3.(9)行方不明者の安否調査4.在北朝鮮被爆者への支援等5.その他なお、上記3の行方不明者のなかには、1いわゆる「拉致被害者」のほか、2北朝鮮に帰還された元在日朝鮮人、3朝鮮人「夫」とともに北朝鮮に渡った日本人妻、4北朝鮮側の依頼による、1945年以前に日本に来てその後帰国していない朝鮮人の方々が含まれています。また、これらの協議事項や開催時期は、それぞれの政府と緊密に連携をしながら表向き両国赤十字社間の会談で決定されてきましたが、日本人配偶者の故郷訪問事業の実施そのものが上記のあるように日朝両国の国交正常化交渉再開のための政府間交渉で取り上げられた事柄だけに、実質的には政府のイニシアティーブで進められてきたのが現実でした。この点が、1956年(昭和31年)の北朝鮮からの日本人未帰還者の引き上げ協議やそのあとに続く1959年(昭和43年)からの在日朝鮮人の北朝鮮への帰還事業における赤十字間協議のスタンスと大きく異なっている点と考えられます。(10)しかしながら、日本政府との協議を含めて、実務的にはできるだけ、赤十字基本原則を念頭に置きつつ事業の実施ができるよう終始考えておりました。56人道研究ジャーナルVol. 3, 2014