ブックタイトル人道ジャーナル第3号

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概要

人道ジャーナル第3号

The Journal of Humanitarian Studies Vol. 3, 2014東日本大震災・津波?震災救援・復興支援活動の6カ月後評価における重要な知見ジェリー・タルボット1本評価の性質2災害救援・復興支援に対する事後評価は、国際赤十字・赤新月運動のグッドプラクティスとして確立している。多くの援助機関が活動を行う途上国では、外国からの評価者により評価が行われるのが普通であるが、自国の人材が豊富で対応能力が高い高所得の先進国においては、その国の中で評価が実施されるのが一般的となっている。したがって、日本赤十字社が東日本大震災・津波(以下、大震災・津波)における自社の対応について、得られた教訓に基づいてより効果的な国内介入の仕組みを整備するために、評価の委託を行ったことは称賛すべき判断であった。また、評価にあたっては、国際支援の動員・調整のあり方に関する位置付け、特に国際赤十字・赤新月社連盟(以下、IFRC)の役割についての考察が求められた。さらに、他の高所得国における赤十字社の大規模災害への対応実績との比較も評価の一環として行われた。本評価の取り組みは、種々の点において新境地を開くものであり、日本赤十字社のみならず高所得国において進められている、防災および災害対応を向上させるための分析や決定のための基盤となった。世界人口の増加や都市化が進むにつれ、環境は悪化し、気候変動に伴う破壊的な気象パターンや海洋の温暖化の影響が現れ、大規模災害の発生リスクが高まる。従来の対応では不十分となることから、我々は「想定外の災害」への対策についても取り組まなければならない。こうした世界的動向は様々な国に同じような影響をもたらすものであるが、評価チームは高所得国に特有である特定の脆弱性やその実態について分析を行った。GDP上は豊かな国であっても、大きな所得格差が存在する場合もある。例えば、米国では、国民のうち最も所得の低い20%の層が得る収入は全国民所得のわずか5%であり、相当数の人々が、社会経済的に恵まれない、「危険にさらされた」生活を送っている。日本のような高齢化の問題が高所得国共通の問題となっており、高齢者は災害時には特に被害を受けやすい。インフラ基盤や技術が非常に発展している一方で、それに過度に依存してしまうリスクも存在する。大震災・津波により道路や線路は損傷し、電話線や携帯電話の基地局は破壊され、ライフラインや通信手段が途絶した。これにより緊急救援のニーズの把握や必要な後方支援の準備が非常に困難な状況となった。その一方で、高所得国では高い対応力をもつ軍隊が支援を展開でき、重機や先進技術も利用可能である。また社会レベルでは損害に対する政府の金銭的支援や保険金給付といった利点もある。各国の事情を踏まえることが最も重要であるが、日本赤十字社の大震災・津波後の支援活動が、他の高所得1ジェリー・タルボットは2011年10月から11月の間、大震災・津波発生から6カ月間の日本赤十字社およびIFRCの災害救助対応の評価チームを率いた。赤十字の職員およびボランティアとして40年以上従事し、ニュージーランド赤十字社の事務総長として13年間、IFRCアジア・大洋州部長として7年間、そしてサモア、戦時中のベトナム、インド洋津波後のモルディブ、また、南アフリカ地域事務所長としてタンザニアおよびジンバブエに赴任した。また、インド洋津波被災地支援の事務総長特別代表として活動した。IFRC退職後は、ニュージーランド赤十字社のボランティアとなり、現在は同国の代議員でもある。2英語版評価報告書はIFRCウェブサイトより入手可能:http://www.ifrc.org/en/publications-and-reports/evaluations/?&z=&r=&co=SP354JP&c=&ti=&mo=&ty=&fm=0&tm=0&fy=&tyr=&fieldname=&sortexp=DESC64人道研究ジャーナルVol. 3, 2014