ブックタイトル人道ジャーナル第3号

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概要

人道ジャーナル第3号

The Journal of Humanitarian Studies Vol. 3, 2014国の大規模災害対策においても共有できる適切な教訓であることは明白である。緊急・救援対応ビヨン・エダーは、人道研究ジャーナル創刊号(2012年)において、大震災・津波の影響と日本赤十字社の対応についてよく説明している。敢えて言及すれば、日本赤十字社は、その役割を全うするという点から、災害発生初日の対応は高い水準であったという評価結果であった。赤十字医療救護班は迅速に展開し、必要な医療および精神的な支援において重要な役割を果たした。予め備蓄された救援物資は速やかに運ばれ、国内の義援金活動は大きな成功を収めた。明確な支援実施計画による十分な準備が機能し、効果的な対応に繋がった。しかしながら、福島原発事故に由来する人道的なニーズにまつわるものを含め、この大規模災害を取り巻く複雑性については想定外であった。米国におけるハリケーン「カトリーナ」やオーストラリア・クィーンズランド州における洪水被害、ニュージーランド・クライストチャーチ市における地震被害の対応を踏まえ、評価チームは共通の課題を掲げた。すなわち、頻度は低いものの発生すると壊滅的な被害をもたらす災害に対して、赤十字社はより適切に備えなくてはならないということである。大震災・津波の事例は、根本的な問いへの対応の必要性を我々に喚起している。例えば我々は、東京やウェリントンを地震や津波が直撃するなどの想像を絶する事態に対する準備ができているだろうか?重大な人道的帰結が生じたのみならず、赤十字の本社が機能しなくなった場合には、比較的影響が少ない他のセンターで活動体制を確立することができるだろうか?そのような問いへの対応は、大規模災害に対する国内レベルの危機管理計画の再考とともに、その国の赤十字社のみでは被災者のニーズを満たすことが困難となった際に、国際赤十字・赤新月運動が連帯の精神をもって活動するための適切なメカニズムの模索の必要性に関する意識を向上させてきた。2013年11月、協調的に、かつ責任ある形で行われる国際人道支援を促進するために、赤十字・赤新月社の人道援助にかかる普遍的な原則および規則(「The Global Principles and Rules for Red Cross and Red Crescent HumanitarianAssistance」、2005年文書の改正版)が採択された。地域レベルでは、オーストラリアおよびニュージーランドの両赤十字社は災害時の相互援助協定を結んでいる。これらは国際赤十字・赤新月運動の準備態勢の向上や対応力の強化を進める施策といえよう。人的資源の活用重要な評価結果の一つに、特に大規模な組織体制を持つ高所得国の赤十字社に関係するものがある。そのような赤十字社では、防災体制の管理および国内災害への対応を担う国内部局と、国際関係や国際支援を取り扱う別の部局が設置されている。大震災・津波後の日本赤十字社はこの典型であった。国際部局に蓄積された知見や専門性は、当初、国内の活動に反映されていなかった。あらゆる種類や規模の国際活動経験を持つ幹部職員はもちろんのこと職員の多くは、海外の災害後支援活動に長期間赴任した実績を有していたが、かれらは国際赤十字のパートナー達との連絡調整業務に追われた。これらのスタッフは国際災害救援および人道状況回復政策、手続き、関連文書、スフィア・プロジェクトの「人道憲章と人道対応に関する最低基準」などの関連基準に最も精通する人々であった。組織内の連携不足は、組織内に存在する知識やスキルの最適な活用の機会の損失を招く。同様の組織的課題は、米国やオーストラリアの赤十字社などの大規模な赤十字社にもみられ、各国の赤十字社が幅広い経験やスキルを最適に活用できるよう、取り組みが進められているところである。ニーズ評価人道研究ジャーナルVol. 3, 2014 65