ブックタイトル人道ジャーナル第3号

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概要

人道ジャーナル第3号

The Journal of Humanitarian Studies Vol. 3, 2014この問題に関連し、赤十字社自らが適時にニーズ評価を実施する能力を持つことの重要性が、大震災・津波を経験したことにより明確に示された。日本における分権型の災害管理体制は、情報収集を担うべき多くの地方自治体が損害を受け機能しなかったため、ニーズ評価を含め、信頼性のあるタイムリーな情報収集を行う妨げとなった。状況把握に10 ? 14日を要したが、これはタイムリーとは言えない。支援活動を行う赤十字社の職員やボランティアが当局と連携して評価を行うことで、この情報の空白は埋めることが可能である。そのためには、利用可能なスキルへのアクセスおよび職員やボランティアがそのための訓練を受けていることが必要である。優秀な、訓練されたボランティアの能力日本赤十字社は、その全国的な病院経営、看護大学および献血運動からみても国際的に大規模な赤十字社である。国および都道府県レベルで施設運営にあたるスタッフは55,000人を超える。災害支援活動は原則的にスタッフの展開により実施される。IFRC「2020年戦略」では、可能な限りコミュニティレベルの訓練を受けた赤十字ボランティアの動員を高めることが各国の赤十字社に求められている。コミュニティの住民は当然、自分たちのコミュニティを熟知しており、最初の支援者は被災地の住民であるという有名な格言が示すとおりである。最も被害を受けた地域では、特に生死を分ける初動対応時において、訓練を受けた赤十字災害支援ボランティア要員の数に限りがあったことが大震災・津波後に判明した。ボランティアが活動する地域では、家を失った被災者への炊き出しなど迅速な支援が行われたが、赤十字社ボランティアが活動していなかった地域では、ボランティアが動員され被災地に派遣されるまでコミュニティベースの支援策を整備することができず、実現までにいくらかの時間を要した。4,000人のボランティアが、支援期間中に「実地の」支援活動を行ったことが日本赤十字社により確認された。その多くは災害管理の訓練を受けておらず、活動初期段階に派遣されてはいない。対照的に、全国社会福祉協会が動員したボランティアは約50万人である。ハリケーン「カトリーナ」の直撃後、ニューオーリンズから避難した百万人規模の被災者の支援にあたった人々のうち、97%が米国赤十字社のボランティアであった。また、同赤十字社は支援者募集システムにより、志願した60,000人ものボランティアを追加採用し、支援に向かわせた。クィーンズランド州の洪水では、1,400人の赤十字ボランティアが動員され、避難所や緊急シェルターの運営やリカバリーセンターの支援にあたり、また被災コミュニティにアウトリーチチームとして派遣された。初動支援者として、コミュニティレベルの支援を行うためにその国の赤十字社に迅速な対応力を提供するボランティアの役割を過度に重要視することはできない。多くの高所得国の赤十字社では、社会構造の変化に伴うボランティア数の減少が課題となっている。大震災・津波支援活動では、大規模災害後の非常時対応および人道支援の重要なコンポーネントとして、より大規模な、訓練を受けたボランティアの拠点を赤十字が構築し管理することの必要性が明確となった。ボランティアはコミュニティにおける赤十字の活動の基盤である。災害が起きると、少なからぬ人々が不遇な環境に置かれた被災者に、人として支援の手を差し伸べようとする。米国赤十字社ではボランティアを募集し、赤十字やその意義について知ってもらった上で任務実施をサポートするシステムが整っている。評価チームは、日本赤十字社がこのようなシステムを導入することにより、その災害後支援活動の規模を拡大させることを提言した。66人道研究ジャーナルVol. 3, 2014