ブックタイトル人道ジャーナル第3号

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概要

人道ジャーナル第3号

The Journal of Humanitarian Studies Vol. 3, 2014情報技術の活用赤十字は新しい情報技術についても考慮する必要がある。その可能性については、クライストチャーチの地震発生後、大学生がフェイスブックを活用して3,000人の若いボランティアを24時間で集めた事例により実証された。この「学生部隊」は数週間のあいだ活動し、液状化が起きた住居や土地の後始末、浸水・損壊した住居の片づけ、そして瓦礫が散乱した道路の復旧などの支援活動を行った。日本赤十字社は通信および情報共有の手段としてソーシャルメディアを活用しているが、一般の赤十字運動と同様に、もっと革新的にこの技術を活動に生かしていく必要がある。赤十字国際委員会は「家族の連絡回復・再会支援事業」(Restoring Family Links。以下、RFL)と呼ばれるプログラムを確立し、紛争や災害で離散した人々の登録を行っている。大震災・津波後に日本赤十字社はRFLを立ち上げたが、書類記入や被災地の人々へのアクセスなどの手続きは大きな遅延に繋がった。通信ネットワークが全国的に復旧すると、いくつかの機関およびグーグル社が家族や友人に連絡を取りたい人々の消息情報を掲載するためのウェブサイトを設置した。RFLと比してこの取り組みは非常に迅速で状況に適応したものとして機能し、国内レベルでの人々の再会というニーズに適合した。一方で、RFLシステムは海外からの多くの問い合わせにうまく対処した。ハリケーン「カトリーナ」による災害後、米国赤十字社はマイクロソフト社と協力関係を結び、被災地から避難した住民の消息追跡および離散した家族の再会支援を行った。グーグルやマイクロソフトなどの世界的ウェブサイトは、データの集約やインターネット利用者へのアクセス性向上などの重要な付加価値を実現する技術を有している。各種の目的に応じて詳細な個人情報の登録が必要になるとみられる一方で、赤十字に対しては、家族や友人との迅速な連絡を実現するために有効なWebサイトやインターネット設備の整備に関して向上が期待できる。日本赤十字社は主要な通信会社と新しいアプローチの開拓に合意した。ガイドラインや最低基準、役割分担と責任、および公認の情報共有等に関する合意により、協力を拡大していく必要がある。原発事故対策福島第一原子力発電所に津波が直撃したことにより発生した原発事故は、大震災・津波後の支援活動に第三の、そして非常に複雑な様相を与えることとなった。政府当局の防災対策は数多くの点で不十分であったことが、現在では周知の事実となっている。災害発生直後の情報不足は、支援活動のため被災地に急行した人々を落胆させ、地元住民が抱える不安の原因となった。多くの人々が風説や誤った情報を受け取り、その結果として全国で、特に東京で買い占めが起き、不安が醸成された。原発から半径30kmの地から避難した被災者の中には、差別的な扱いや厳しい偏見(スティグマ)を受ける人もいた。日本赤十字社は核医学の専門家を配置していたが、活動地域の安全性に対する懸念が高まり、被災地に配置されていた医療チームのメンバーは他の救援者とともに撤退した。許容放射線レベルの設定や防護服、防護マスク、ゴーグル、線量計が利用可能となるまでに数日を要した。原発事故の要素は、各関係者の役割や責任の明確な定義とともに日本赤十字社の災害支援計画に組み入れる必要がある。日本赤十字社は一歩進んで、地元住民への状況の周知、および不安の緩和や差別防止のための情報普及を優先事項とすることを決定した。原発事故が地球規模の脅威であり、1986年のチェルノブイリ原発事故後の経験が示すように多くの周辺国人道研究ジャーナルVol. 3, 2014 67