ブックタイトル人道ジャーナル第3号

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概要

人道ジャーナル第3号

The Journal of Humanitarian Studies Vol. 3, 2014に影響を与えるものであるという事実に鑑み、日本赤十字社は、原発事故への備えや対応における良好な情報共有と活動における優先事項の確認を目的とした国際赤十字・赤新月フォーラムの開催を主導した。心理的支援災害に伴うトラウマはストレスや激しい不安感をもたらす。愛する者や住まい、生活手段、そして多くの場合、コミュニティを根こそぎ失った人々の場合には特にそうである。日本赤十字社は、1995年の阪神・淡路大震災後に確認されたニーズを基に開発された心理的支援(以下、心のケア)プログラムを開発した。2011年までに心のケアの研修を受けた医療救護人員は9,000人を超え、そのうちの700人は、現場に派遣される約900の医療救護班または専門チームの一員として配置された。これらの専門スタッフは、専門的な訓練を受けた3,000人以上のボランティアにより補完された。災害発生直後の心のケアボランティア配置では、被災コミュニティへのアクセスというロジスティックスの課題、安全な活動環境の提供に関する課題に直面した。避難所は比較的にアクセスし易いものの、避難所で生活していない人々へのアクセスは非常に困難であった。生存者の中でも高齢者が非常に多く、特別な支援プログラムが必要となった。レビュープロセスの一環として、あらゆる課題が確認された。被災者の多く、特に原発事故があった場所からの避難者にとっては、10年ではなくとも複数年の支援が必要となるであろう。この支援はひとえに、地元の精神科医および心理士からのサポートを受け、現地で採用され訓練を受けた心のケアボランティアの拠点を基盤として行うことが可能である。心のケアのプログラム・デザインは大震災・津波の経験の結果として適合されるであろうが、これに関連して言及すべきと思われる側面が他にも存在した。第一に、被災地には、日本語を母国語としない多くの人々が居住している点である(例えば、フィリピン、中国、韓国出身の住民)。それらの人々に対する支援は、同じ母国語を話し、同じ文化や慣習を持つ者が行うべきである。国際的な組織としての利点の一つは、そのような支援が他国の赤十字社から享受できるということである。29人の日本人学生が犠牲となったクライストチャーチの地震では、日本赤十字社が心のケア人員で編成されるチームをクライストチャーチに派遣し、深い悲しみに明け暮れる家族や友人に対し支援を行った。ニュージーランドでは、このような状況における遺体に対しては法医学による身元確認を行うことから、愛する家族の遺体と再会するまでに数週間を要する。そのため、この支援は特に必要であった。グローバル化に伴い、海外旅行や海外で働き生活する機会は増えたことからも、こういった要素を心のケアのプログラムに組み込むことが必要である。評価チームが確認した第二の側面は、多くの地方自治体職員が深いトラウマに苦しみながらも、コミュニティへの基本的な救援サービスの提供や、重要な行政サービスの運営に奔走したことであった。岩手県大槌町役場では、25%の職員が津波により命を奪われ、生存者も家族との死別に苦しんでいた。緊急支援に携わる者もこの痛ましい状況で支援を必要としていることは、非常に印象的であった。以上は、支援活動の最初の6ヵ月間について得られた教訓のうちほんの一部にすぎない。本評価は、日本赤十字社のみならず、特に高所得国の赤十字社、そしてIFRC事務局に対しても学びを提供するものである。この評価結果は、評価チームの作業を支援してくれた日本赤十字社の全面的な協力とオープンな姿勢なしには得られなかったであろう。68人道研究ジャーナルVol. 3, 2014