ブックタイトル人道ジャーナル第3号

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概要

人道ジャーナル第3号

The Journal of Humanitarian Studies Vol. 3, 2014得国における)IFRCの支援の役割を考えること、また日赤に全てのレベルにおける組織やシステムの強化を検討する機会を与えること(特にコミュニティレベルでの支援の妥当性や対策を改善できるようにすること)などである。これらはすべて、次に述べる分野において分析・評価が行われた。その分野とは、効果・効率性、インパクト、説明責任、調整力、妥当性、対象範囲の調整、規則・原則の順守、事前準備である。いずれにしても、前述したとおり日本国民に内包される特質性、我々が震災後2年間で観察することができた個人および集団としての反応について、次に幾つかの概念を述べてみたい。その一つが日本人の持つ「廉潔さ」である。日本人の日常生活における一般的な特質性として、また震災時は特にそうであったが、略奪・強奪といったものが一切なく、配給される物資を受け取るにも行儀よく慎ましやかで、それは職務上の態度といったものではなく、団結心から発している助け合いの心であった。また、「厳格さ」、「簡素さ」というのも日本国民の行動様式の中で私が確認できた美徳である。高いレベルの知性・技術力を備えながらもそれを誇示することがなく、現場ではすべての人が皆のために労を厭わず、必要な作業に協力しようとしていた。震災により傷ついたインフラ基盤の整備やサービスの向上に関する日赤の取り組みは、住民の置かれた状況に即した設備へのアクセスを提供するなど、地元コミュニティのニーズに答える大変適切なものであった。例えば、ここ数年で高齢者の数が増加し、これらの人々を対象とした特別施設の必要性を強く感じていた町が、津波で半壊した病院を再建した例などが挙げられる。この病院の再建では、コミュニティのニーズが特に高かった高齢者や慢性疾患患者専用の居住フロアが設けられるなど、プロジェクト終了後に大変高く評価された。日赤の復興(修繕・再建)事業における協力者や国際ドナーの受け入れに対する柔軟性は、高く認識するに値するものであり、これによって地元コミュニティのニーズや現状に即した「より良い再建」を可能にし、プロジェクトの妥当性をさらに増加させることに繋がった。日本人のもう一つの特徴を表す概念は「努力」である。それは個人的な行動だけでなく、集団行動においても言えることである。地震・津波の数日後には、建設会社は全てを失ったにもかかわらず再建の作業に乗り出し、一方で企業は業務を再開し、教師も郵便配達人も、医者や看護師は言うまでもなく、皆、直ちに自分の業務に戻った。それも皆が心の準備もできて何をすべきかを理解し、不幸のどん底に意気消沈してしまうことに打ち勝っていた。努力を通じた復興こそ、共通の目標であった。「信念・献身・利他心」:日本では皆が驚くほど献身の心を持って、素性や身分とは無関係に自分のやるべき事を実行しようとする。また常に他人に敬意の念を持って接する精神には特筆すべきものがある。日本人として実質的な要件ともいえる「奉仕の精神」について言及したい。すべての人々が、この災害の復興に貢献しようと一粒の砂を持ち寄り、様々な組織に協力していた。そしてそのように協力しているにもかかわらず、それは自分達の義務であると考え、ボランティアや海外からのドナーに感謝の言葉を述べているのを耳にすることも常であった。このようにして、ボランティアらの貢献は日本国民に知られ、認められたのである。また、「コミュニティ」という概念も特筆したいと考える。日本人の思考において「集団」は優先される事柄である。そして、コミュニティ単位の活動というものが、今回の評価で日本赤十字社が全国で行った活動の中で改善点の一つとして指摘された。同様に指摘されたのはコーディネーションの問題である。今回の災害は前代未聞の規模であったことや、復興対策に使える資金は当初不確定であったものの、その後は全ての予想を超える額になったために、大規模な復興活動に関わる当事者全員の間で連携、調整を図ることが大きな課題であった76人道研究ジャーナルVol. 3, 2014