ブックタイトル人道ジャーナル第3号

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概要

人道ジャーナル第3号

The Journal of Humanitarian Studies Vol. 3, 2014日本赤十字社にはこの復興分野での主導権がなかったこと、また組織のキャパシティーに関する不安および資金が限られていたことによる不確定性により、復興活動に参加する用意が整っていなかった。しかしながら、緊急事態への人道支援活動の段階を乗り越えて、予期しなかった(こちらから求めたものではない)国際社会からの反響を得て、日赤は震災の翌月から復興プログラムに世界中から集まった資金を投入することを決定した。このような活動を新たな緊急時対策として、より確立した計画に作り上げて将来に備えることが今後の課題である。そのためには、「平時に」準備を進めることが重要である。この言葉は、日赤の内部で使われているということであったが、すなわち災害が起きていない時にコミュニティとの活動を改善していこうと日々取り組みをすることである。偉大なる日本国民のこのような特質性は、日本赤十字社がコミュニティベースのボランティア活動を進めて行くにあたって助けとなるに違いない。ボランティア活動は、今後のニーズ評価や復興活動をより行い易くし、貢献できるものとして、今回の評価でも優先事項として提言がなされており、日本赤十字社が実行していかなければならない課題である。また、コミュニティ活動にボランティアの参加を増やしていくことは、「受益者とのコミュニケーション」、すなわち一緒に活動をしている人々やコミュニティとの関係を促進するのに役立つ。この点もまた評価において明らかにされたことであった。次に私は、受益者とのコミュニケーションおよび受益者とボランティアの関係について意見を述べたいと思う。というのもそれこそが今の時点における問題であるとともに真に必要なことであると考えるからだ。受益者とのコミュニケーションには二方向性を持った働きがある。一つは彼らに支援プログラムの目的や手続きに関する情報を提供すること、そしてもう一つが、実はこちらの方が重要なのだが、受益者から情報を入手し、共に活動する人たちのニーズが何処にあるのかを見定めること、そして彼らに単なる支援の受け手としてではなく参加者意識を持ってもらうことである。重要なのは、コミュニケーションというものが赤十字社や赤新月社の活動についての情報を提供するのに役立つだけでなく、利用者全般の苦情や疑問、意見を把握し、それに対して回答していく手段であり、コミュニティの意見をオペレーション計画に確実に反映させていくことなのである。今日、支援に関するメッセージや情報を発信し、健康増進や安全に関する指導を提供するにあたり、新技術が重要な助けとなっている。しかし、人と人との直接のコミュニケーションは根源的なものであり、前述した二方向性を完結させるための鍵である。よって、受益者とのコミュニケーションを持つことが不可欠である。様々なアンケート調査の結果、他のオペレーションにおいて明らかになったことであるが、アンケートの回答者は、チャンスがあればテレホンセンタ―に相談するより赤十字社や赤新月社のスタッフやボランティアと直接話がしたいという希望を抱いている。また、高齢者はその他の人々よりも新技術のツールを使ってコミュニケーションを取るのが難しく、特に携帯電話でのテキストメッセージによるコミュニケーションは困難であることがわかった。よって、彼らと直接コンタクトを取らないと重大な落とし穴に陥ることになりかねない。何故なら高齢者こそ最も脆弱で情報が必要なグループだからである。人道研究ジャーナルVol. 3, 2014 77