ブックタイトル人道ジャーナル第3号

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概要

人道ジャーナル第3号

The Journal of Humanitarian Studies Vol. 3, 2014よって、受益者とのコミュニケーション改善プログラムを策定する目的は、赤十字社・赤新月社のスタッフやボランティアと、支援対象者との直接的なコンタクトを変えてしまうことではなく、活動に従事するコミュニティ内で情報の流れをより完全なものにし、サポートしながら広めていくものである。受益者とのコミュニケーションの取り組みがどれ程の影響を及ぼしているかを絶対的な形で評価するということは、何らかの行動や特定の成果をいずれかの活動に結び付けるのと同様に難しいものである。しかし、だからと言って試みないということではない。コミュニティの保健・福祉分野において、受益者とのコミュニケーションのもたらす直接的な影響やオペレーション計画の全体的な効率を調査しようという取り組みは必要である。例えば、ハイチの経験では、赤十字社・赤新月社の受益者とのコミュニケーションにより何千もの人々が情報を得て、その結果、自分自身や家族、愛する人々の命を守り、生活を向上させることに繋がったことが明らかになっており、それは認識に値するものである。受益者とのコミュニケーションは、人道支援活動において多くのメリットがある。それは、生命を救い、支援活動の尊厳と信頼を強化し、決断に当たって被害を受けた人々に声を発する機会を与え、それがプログラムの効率性・効果を上げることに繋がるということである。「世界災害報告2005」2によると、人々は水や食料、医薬品、避難所と同じくらい情報を必要としている。被害を受けたコミュニティや住民とコミュニケーションを取ることは災害の前後および最中において不可欠であり、赤十字社・赤新月社にとって、人々の命を救う情報を提供する手立てとなる。受益者とのコミュニケーション、すなわち支援を必要とする人々に情報を提供し、また声を聴くプロセスは、すべての人道支援活動における根本的な手段である。また、北半球で最も結核罹患率の高いハイチの経験から、「この病気を予防するには、人々が必要とする情報を広めることが決め手である」ことが明らかになっている。受益者とのコミュニケーションという概念は新しいものではない。しかし、被害住民の参加を促す手段としては新しいものがあり、それは年々進化している。赤十字社および赤新月社は、できる限り新しい技術でコミュニケーションを取る可能性を模索しなければならない。それは、SMSや双方向の音声システム、ソーシャルメディアなど、できるだけ多くの人々に効果・効率的に情報を届けられるシステムである。赤十字および赤新月社のボランティアは、保健衛生やその他の分野を促進させるためのメッセージを世界中のコミュニティに発信し続けなければならない。しかし同時に、人々にメッセージを届けるために、どのソーシャルメディアを使うのかを取捨選択することも必要である。我々は、受益者との関係において陥ってきた運営上の重大な欠陥に立ち向かわなければならない。また、我々は受益者と共同して働くべきであり、赤十字が受益者にモノを与える、彼らのために何かをしてあげるという単なる慈善的な態度を克服しなければならない。マスコミの扱いに関しても、適切に働きかけを行うべきである。我々の声を強化すること、信用性の構築、我々の行動の妥当性も、質の高いデータと個々のストーリーにおいて調和が取れたものでなければならない。2(訳注)日本赤十字社訳「世界災害白書2005」、日本赤十字社発行78人道研究ジャーナルVol. 3, 2014