ブックタイトル人道センタージャーナル第3号 付録(提言書)

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概要

人道センタージャーナル第3号 付録(提言書)

The Journal of Humanitarian Studies Vol. 3 Annex, 2014赤新月社連盟が提唱する国際災害対応法(IDRL)の考え方とも軌を一にするものである(詳細は次項)。一方で、このような狭義の法的準備(legal preparedness)に加えて、関係省庁が各分野において災害発生時に採用すべき行動指針や運用基準をまとめた法令未満のマニュアル類を整備しておくことも有効であり、広義の法的準備として合わせて推進すべきである。?東日本大震災にあたって法的準備が有効に機能した分野の例として、海外の救助犬の受入れが挙げられる。かつて、阪神・淡路大震災の際には、救助犬を伴う海外救助隊の受入れが遅れたことが問題となったが、この反省も踏まえ、農林水産省では、省令(犬等の輸出入検疫規則)を改正し、動物検疫のため係留中の犬が災害救助のため必要である場合に一時的に動物検疫所の敷地外に出すことができる旨を明確化するとともに(同規則第4条第5項)、狂犬病予防注射の接種など救助犬の受入れ条件をあらかじめ整理していた。このため、東日本大震災の発生時には、3月11日の発災当日に通知を発出し、省令に基づく弾力的な検疫ルールを周知するとともに、救助犬派遣の申し出のあった国に対して具体的な受入れの要件をいち早く伝達することができた。これによって混乱は最小限に抑えられ、震災発生の翌日には救助犬を帯同した二つの救助隊(シンガポール隊及び韓国隊)の受入れが実現した。?一方で、例えば、日本の医師免許を持たない外国人医師による医療行為など、緊急時には例外的に許容しなければならない事態も想定されるが、あらかじめどのような事態の場合に必要となるかを想定して例外的措置の範囲を法令で規定することが困難な分野もある。これらについては、必ずしも狭義の法的準備にこだわることなく、緊急時にどのような周知を行うべきか等について関係省庁があらかじめ手順を決めておくことが重要である22。?この他、先に述べた予備費支弁などの臨時の予算措置や、各災害対策本部への要員派遣など人員配置に関する臨時措置についても、必ずしも法令レベルでの準備は必要ではないが、あらかじめ行動指針や運用基準をまとめたマニュアルを整備しておくことが有効である。特に東日本大震災では、政府の緊急災害対策本部に対して大規模かつ長期間の人員配置が必要となり、柔軟な人員派遣のための人選やローテーションのルールの明確化が求められた。また、外務省が、海外からの救助隊にそれぞれ外務省職員をリエゾンオフィサーとして同行させることを決め、現地での救助隊の活動調整の円滑化に大きく貢献した。一方、当初、装備や任務についての理解が不十分な面もあったことから今後に向けたマニュアルの整備が必要であろう。3国際的なガイドラインの活用:IDRL22なお、上述の外国人医師による医療行為の例に関しては、厚生労働省が3月14日付で通知を発出し、被災者に対し必要最低限の医療行為を行うことは刑法第35条に規定する正当業務行為として違法性が阻却されうるとの「所管課見解」が示された。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・16人道研究ジャーナルVol. 3付録, 2014