ブックタイトルThe Journal of Humanitarian Studies
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The Journal of Humanitarian Studies
Journal of Humanitarian Studies Vol. 4, 2015国際赤十字・赤新月運動の中におけるICRCの役割をどう見ていますか?ICRCで働き始めたとき、もちろんそれ以前から、この運動に参加することは大きな強みであり、また組織の素晴しい特権であると感じました。このことについて、私はよく考えます。世界で唯一の存在になることに大きな利益があるとは考えていません。私たちは一人ではなく、結束の強い運動内で支え合う環境を活用することにより、計り知れない利益を得られているからです。そして運動内部の関係強化に力を注がなくてはならないと感じています。私たちは皆、以下のことを理解しています。今日、各国赤十字・赤新月社は強いリーダーシップを発揮できる状況にあり、ICRCも強い協力関係を築く相手として関心を持っています。大規模な活動を伴うほとんどの活動地で、共に活動をしており、この強い関係はお互いに利益をもたらしています。なお、各国の赤十字・赤新月社で、国際的な側面が強化されつつあります。これがより一層進めば、私たちの全ての関心ごとに対して、同じ赤十字と基本原則のもと共に働く集団が、より統一された対応を取れると思います。そのためには、複雑な道具や意思決定の調整メカニズムが必ず必要になるというわけではありませんが、お互いに話し合いを重ね、同じ方向を向いて活動をしているか、共通の目標を持っているかを確認し合い、そもそものお互いの違いを調整するお膳立てが必要となります。状況に即してこの運動の強みを使い分けねばならないでしょう。直近の赤十字国際会議の議事録は、国際赤十字・赤新月運動の活動の中でICRCが特段関心を持つ極めて重要な分野や決議を示しています。私たちが関心を持つ重要な分野を支援する土台を広げるために、既存の仕組みを活用できるのは私たちにとって大きな強みです。戦略的な協力と現場での協力をともにより一層進めて、運動内で人道的価値を広めるべきでしょう。私はこの運動を、現場にとどまらず、地域的、そして国際的な結びつきを強める機会として見ています。将来にわたって、ICRCがこの視点を継承し、強化していけるよう、私自身も全力を注いでいくつもりです。人道外交についてどのように見ていますか?私たちの業務に関して言うと、国際人道法の発展と人道政策がそれぞれ別の分野だとは思っていません。人道政策というのは、私たちの関心や活動を促進するために使われる外交基盤です。そのため、私はある国を訪れたり、国連や非同盟運動、赤十字・赤新月社汎アフリカ会議などの国際会議に出席したりするとき、それらの会議で話し合われることを互いに結びつけて考えるだけではなく、その場でICRCの活動を宣伝することで、法の発展への支援を獲得し、活動を応援してもらいます。前職のスイス外務省時代は、外交関係において常に二国間および多国間の摩擦や分断が発生していたことに複雑な思いを抱いていました。人道外交の分野においては、このような分断は避けなければいけません。なお、バーチャル会議室で行われるだけのような、概念的な外交および政治の議論にもとづいた抽象的な人道外交などありません。人道外交の大きな課題は、人道的なことを議題とする外交会議に参加することによって、人道活動の運営を強化することです。もうひとつ別の課題は、現場で必要とされている業務に対して政治的な援助を得るために人道外交を利用することです。そして、この原動力は創造され、継続され、そして発展されねばなりません。ICRCとして、国際会議に出席したときは注意深く耳を傾け、現場の現状について話します。人道支援活動に政治的援助が加わると、現地での活動がより強力なものになります。人道外交によって、組織の活動、人道法の発展、そして外交的・政治的討議が8人道研究ジャーナルVol. 4, 2015