ブックタイトルThe Journal of Humanitarian Studies

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概要

The Journal of Humanitarian Studies

Journal of Humanitarian Studies Vol. 4, 2015井上:それが成功、不成功の分かれ目だ。成功、不成功なんて読めないんだけど。そこがその境目だったとですよ。田島:表現方法としてね。井上:はい、例えば、田島さんがおっしゃっていることは僕も全く同感で、赤十字を理解してもらうっていうアプローチはやめよう。理解というのは説明することなんですよね。つまり、感じてもらえばいいんだと。説明は要らないんだ。もう説明はやめようと。なぜその確信を持ったかというと、藤森さんと話しをしていてしばしばこうおっしゃったんですね。「人が本当に動こうとするのは理屈じゃない。感動しないと人は動かない。赤十字の職員自身が元気になるためにも感動するような何かがないとね」ということです。「理屈とか何かじゃ人は動かないよね」って。理屈で「これが必要でしょう、だからやってよ」と言っても人はなかなか動かない。本当に感動したときにしか人間は動かないということを藤森さんはよくおっしゃった。日赤が今までつくっていた、僕も広報や報道を結構長くやりましたが、自分のしてきた仕事を否定するようで嫌なんだけれど、今までつくった映像とかは赤十字の自画自賛的なものが多かった。「赤十字は日夜、今日も人々のために活動しています・・・」みたいな。田島:「働いています」、うん。井上:そう。「全国各地でネットワークを結集して日夜活躍しています。あなたもこの善意の活動にぜひご協力ください」ってな調子。こういう紋切り型の広報がずうっとあったんですよ。そういうものだけをやりたくないという思いはあった。だから、今おっしゃったように、幹部の人から言わせれば、社員募集の説明ぐらい入れたいんでしょうね。こんな絶好なチャンスに、何で社員を獲得するようなプレゼンをしないのかとか、ぜひ社員になってくださいという広報、あるいは社員の現勢を見せないのか、そういう活動を見せないのかみたいな議論があったんです。でも、そういう自己PR的な要素は一切なかった。(*寄付募集行為は万博協会規則で禁止されていた。)田島:やれなかった。井上:だから、そういう面では内心、企画方針に抵抗を感じていた人は多かったと思うんですよ。東浦:日本赤十字館じゃないんですよね。国際赤十字・赤新月館なんですよ。三根:いやいや、そこまで言ってしまうとちょっとあれなんですが、その前に、やっぱり万博協会との話の中で、だいぶ赤十字に対して相当きつい言葉で言われたのはあるんですね。万博協会との交渉・万博協会の注文東浦:そうですね。普通考えると国際博覧会条約に入っていないところが出展するということは難しいわけで、国際赤十字運動が主体にはなれない。当然、主催国がその参加を認めないといけないわけですから、独立行政法人日本万国博覧会記念機構との交渉では、いろいろと事務局としては大変な思いをされていましたね。三根:従来の形の展示だけで終わらせるようなことがもしあったら、万博協会としても、こういう言葉で言っているんですよ、「赤十字が出展する場合にも、その内容、質が問われますよ」と。「各国に無理を言ってスペースを削減している中で、あれだけのスペースを赤十字に提供しながら、“あんな内容では”と言われることのないようにしてくれ」と。で、「協会としても、こうした声に対して、赤十字の展示は集客に貢献しているのだと反論できるような、アトラクティブな質の良い内容にしていただきたい」、とはっきり言われましてね。田島:脅迫だね(笑)。三根:脅迫です(笑)というぐらい、これはショックでしたね。116人道研究ジャーナルVol. 4, 2015