ブックタイトルThe Journal of Humanitarian Studies
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The Journal of Humanitarian Studies
Journal of Humanitarian Studies Vol. 4, 2015洪:私は、それには立ち会えなかったんですけれど、映像チームで渡辺さんと、山田さんもいたのかな。渡辺:いました。洪:そのときの印象深い言葉をまだ覚えているんだけれど、何か彼は見ているときから普通の少年のような感じで、気配も何か消すような感じで、見終わった後に、何だっけな、「すばらしい」と言われた、と。渡辺:ちょっと涙ぐんでいたんですよ。で、「すばらしい」って言った後で、「でも、荷が思いです」っておっしゃったのね。全部背負う気で提供したんです。結局この曲のメッセージが、赤十字を代弁する曲としてみんなのところに届いていくんだ。その責任を自分で背負わなきゃいけないっていう、それだけの責任を持って曲を提供してくれた。でも、もうその映像を見て、「すばらしい、ありがとうございます」、で終わってしまったんです。だからもう何のリクエストもなかった。洪:その場に立ち会った渡辺さんの言葉を覚えていますが、「す、ば、ら、し、い」っていう何か、そう、ぱっ、ぱっ、ぱっ、ぱっ、と4つの単語を言われ、もう多分それでオールオーケーみたいな感じだったっていう。渡辺:そうなんです。あの桜井さんのメッセージの映像、あるじゃないですか。あれ、私たち何の演出もしていないんですよ。あそこでおっしゃっていることというのが、もう本当に桜井さんが全部何をしゃべるかを考えてしゃべっていらっしゃる。で、一言たりとも赤十字のメッセージを外していないんですよね。だから、それだけ深くちゃんと考えてくだすって曲を提供してくださったという。あのインタビューを撮っているときのあのコメントも、われわれはかなり感動しましたね。何かわれわれ以上に本当に赤十字のことを思ってくださっている、人道支援ということを深く考えてくださっているというのに感銘を受けましたね。三根:あの映像の最後のところに、片足がないお母さんと子どもがこうね、あれがすごく感動したみたいですね、みんなね、その入れ替えたとおっしゃった最後の場面です。渡辺:あれは田島さんの一言です。東浦:田島さんがどんなことを言われたんですか。田島:入れ替えろって言った?東浦:えっ?入れ替えろ(笑)。渡辺:いや、「入れ替えろ」とおっしゃらなかったんですよ。エンディングで、実は私たちが2つの方向で迷っていました。ハッピーエンディングにするべきなのか、いや、やっぱりみんなつらいんだっていう。田島:うん、突き放すかね。渡辺:はい。ので、痛みがまだまだ続いているっていうことで終わらすのか、実は悩んでいますと申し上げたら、「それは当然悲喜こもごもでしょう」っておっしゃったんですよ。悲喜こもごもをワンカットで表す写真はあの写真しかないんです。最終的なカットはあのカットしかないな。本当に田島さんの一言です。井上:あの最後が、みんな抱き合って喜んで笑っていたりして、みんな「良かったね」みたいなので終わったらね・・・・。渡辺:それはないでしょうね(笑)。井上:もう臭い、臭い、どこにでもある終わり方ですよね。あれだから良かった。あれしかないね、結果的に見ると本当にそう思ったんです。東浦:私が映像選びのときに一番気になっていたのは、「赤十字とNGOのための行動規範」というものがあって、その中に、被災者だとか犠牲者を。井上:そう、そういうものを売り物にしちゃいかんというね。東浦:そういう何というか、もう立ち上がれないような人たちなんだということを表しちゃ124人道研究ジャーナルVol. 4, 2015