ブックタイトルThe Journal of Humanitarian Studies

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概要

The Journal of Humanitarian Studies

Journal of Humanitarian Studies Vol. 4, 2015返ります。そこで、創設者たちがいかに先進的な考えを持っていたか、また、この初期の考えがどのようにして、核となる目標を保持しながら組織が発展・適応することを可能としたか、分析します。そして第二に、ICRCが今日直面する課題を追究します。■ICRC設立時の世界「残忍な戦争行為には、それに対応する洗練された慈悲の心が存在すべきである」とICRC創立者二人は述べます(1)。当時から、前例を見ない世界の発展が新たな危険を生んでおり、その新たな危機を予測、そして管理する必要性がある、ということが認識されていたのです。科学的・技術的進歩の加速19世紀における人々の生活が現代のものより厳しく、危険なものであったことは間違いありません。しかしながら、同時代は加速する科学的・技術的進歩に特徴づけられるものでもありました。古く変化のない秩序の時代から、現代まで続く、急激な変化の時代への転換期であったとも言えます。あらゆる分野で革新的な発明が起こったことで、急速な発展が可能になりました。1863年には、この世界の果てがどうなっているかも明らかになっていませんでした。この年、イギリスの探検家スピークとグラントはタンガニーカ湖とヴィクトリア湖を発見し、後者がナイル川の源流であることも後に証明されます。1859年にはダーウィンが著作「種の起源」で進化論を発表し、人類というのはまだ調査されていない未知の領域とされていました。また、輸送とコミュニケーションの技術が発展するにつれ、世界はより小さくなっていきます。1863年には産業革命がイギリスからヨーロッパ本土と北米に広がっていました。この年、ロンドン地下鉄で最初の区間が開通し、万国電信連合(ITU)の設立も間近に迫っていました(2)。アメリカでは最初の大陸鉄道の建設が始まっていました(3)。思想の進化この時代には社会組織や権利、教育に関する新たな考えが登場し、人々の支持を集めていました。新たな社会的・政治的制度を通じて、そのような考えが歴史上初めて実現できると考えられていたのです。現代も残る階級や宗教、性別間の格差および不平等は、無論社会に根深く存在しており、法律上も認められていました。しかし、科学や技術面の進歩を受けて登場した新たなイデオロギーは、人間がどのように組織化されるべきか、独自の国際的な視野を提示しました。このイデオロギーのいくつかは、次の世紀の歴史を形作るものとなり、時に悲劇的な結果をもたらしました(4)。1865年にはアメリカが他国に続き、奴隷制を廃止しました(5)。しかし、このような進展をよそに、植民地支配も拡大していきます。植民地事業は後に「慈善的」な大義名分で正当化されることになりますが、当時、「人道」というのは「文明的」な世界の住民にのみ適用される、限定的な概念でした。現代においても、人道支援活動は欧米の帝国主義を表すものとして疑われることがあります。それでもなお、この時代において、フランス革命の平等主義的な考えに端を発する政治的、社会的、そして経済的権利を求める運動が、労働者階級の人々を草分け的存在として展開されたのです(6)。12人道研究ジャーナルVol. 4, 2015