ブックタイトルThe Journal of Humanitarian Studies
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The Journal of Humanitarian Studies
Journal of Humanitarian Studies Vol. 4, 2015人道および仁愛の原則違反に対して、あらゆる手段を尽して対抗するということについても同意を致します。このことを実現するための実際的な手段をお示しくだされれば幸甚です。ICRCは各社のご意見を伺うために、回状を送り、次の赤十字国際会議で討議したいと考えております。」(46)確かに、ICRCは11月27日付けで各社に回状を出している。戦争で負傷した人々、肺病の感謝、戦死者の遺族に対する人道活動が必要であろうが、どのようにしたら、最も有効にこれらの事業を行えるかを各社に質している。クラメル女史から蜷川の書簡を見せられたクルーゾーから、翌年1月6日付けの書簡で、関心ある内容なので、目下準備中の「国際赤十字評論」に寄稿するよう促された。蜷川は「赤十字の将来の任務と平和条約」と題する仏文の論文をICRC宛てに送付した。これが「国際赤十字評論」の1919年3月15日発行に掲載されている(47)。蜷川の論点彼の基本的な考えは、「赤十字の平時事業を、法律的の基礎におく可し」というものである。彼の論文「赤十字将来の任務と平和条約」を要約してみる。戦争中に同盟国・連合国を訪問し、各国の赤十字社の事業が著しく発展したこの人道事業は、人々の協調を維持し、嫌忌すべき同胞の殺傷を予防する機関として、平時に存続されるべきものと考えた。赤十字社がその立派な仕事を、それまでのように陸と海の負傷兵の救護のみに限定しなかったために、いっそう立派に果たせたのである。戦時中にこのような発展をとげたこの事業は、戦争の終結とともに終わることになってはならない。それどころか、この事業は完全なものとなるまで進展し続けなければならない。私の見るところ、世界が理想的な平和の実現を待望している今日、このようなことが世界的な確信とならなければならない。2つの事柄が検討されなければならない。1つには、その誕生以来ジュネーブ条約になされてきた改定であり、2つ目には各国の赤十字社の人道的事業を徐々に発展させることである。世界戦争は、赤十字の事業に若干の変化をもたらした。陸および海にある軍人を救うことだけでなく、その活動範囲を拡張して、普通の人々と俘虜を救うことになった。それも条約を改定せずにである。これは時代の要求であった。講和が調印されると、外国における赤十字の立派な仕事は即座に停止されるのであろうか。赤十字はその称賛に値する仕事を続行する権利を失うのであろうか。この人道的な介入が、法律上外国では禁止されるのであれば、それは実に人道に対する宣戦の布告ということになろう。逆に、それが法律上認められるとすれば、それは人道の勝利ということになろう。世界の正常な状態とは、どのようなものをいうのであろうか。平和か戦争か。今日、平和がすべての人により求められている。今日、「国際連盟」と命名された新しい制度が審議されている。この制度が実現されたならば、現行のジュネーブ条約は必要なくなる。ジュネーブ条約は改定しなければならない。このあたり、いささか理想主義に走っているように思われるが、それはその後僅か20年たらずで、次の大きな戦争が起きたことを知っているから思うのであって、国際連盟を考えていた人々は、再びこのような惨禍を起こしてはいけないと真剣だった。「法律的に有らざるものは、確実性を欠く。」というのが、有賀長雄のもとで国際法学者となった156人道研究ジャーナルVol. 4, 2015