ブックタイトルThe Journal of Humanitarian Studies
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The Journal of Humanitarian Studies
Journal of Humanitarian Studies Vol. 4, 2015蜷川の強い主張である。仁恵(思いやりの心)の範囲内に委ねるとすれば、道徳的な普通の結果をもたらすに過ぎない。そのような考えは数千年にわたって存在している。法律的な、そして重要な意義を付すために、国際条約の締結を必要とするのである、と訴えている。人道は、戦時に交戦中の軍隊間の恐怖と苦痛を軽減することができる。平時には同情、友情、兄弟愛の絆を、各国民の間で強化することができる。ウィルソン大統領がしたように、平和は人道から生まれるのであって、利害関係から生まれるものではない。赤十字はその仕事を戦時の負傷者の救護に厳格に限らなければならないのであろうか。とんでもない。そのようなことは許されず、赤十字の仕事がさらに広く拡大されることが要請されている。人道的な仕事はチャリティーの範囲内に限定されなければならないのであろうか。とんでもない!赤十字は人道に関する広範囲の機関であり、また理想的な平和の唯一の担い手である。その仕事を正当に行うためには、新しい赤十字条約が、世界平和を正当に願う国々の間で調印されなければならない。国際連盟を強固な基盤の上に置くためには、もう一つのものを付け加える必要がある。それは国際連盟の加盟国の間に人道の権利と義務を法的に確定することである。各国の人道的な事業の法制化こそ、国際連盟成立に最後のひと筆を加え、完全なものとする。私たちには、共同に行う人道的な活動という、より大きな目的がある。災害(例えば、地震、洪水など)の場合には、必要な人員、物資、救援金を供与することである。われわれが人道的・倫理的国際連盟を創設し、新しい世界に永遠の平和を築こうと真剣に願うのであれば、人道の権利と義務とにより堅く結ばれていなければいけない。利害関係からではなく、人道主義からだけ生まれ出てくる永遠の平和を確保するために協調して活動しなければならない。人道の義務とは何であるかを決めるための仕事にとりかかろう。半世紀前に懸命な国々によって調印された条約に倣って、平時に適用できる新しい条約を作ろう。こうして政治的国際連盟とともに人道的国際連盟が形成されることになろう、と蜷川は書いている。蜷川は次の5点を条約に入れることを要求する。(1)天災または疫病によって、不幸に陥った人のために、各国の赤十字社を通じて、人種の区別なく、救恤を行うこと。その犠牲者を救う方法に関しては、各国赤十字社間に、あらかじめ、または随時に協定すること(2)平時における赤十字の事業は、各国の政府によって尊重されること(3)赤十字の医師、看護婦、その他の職員は、その身分職業について、民族の区別なしに承認されること(4)赤十字の名において建設される病院、学校、その他の保健施設は、各国の政府より、平等に取り扱われること。但しその建設された土地に属する国の衛生法規に従うこと(5)赤十字の名において開始された病院に付属する材料は、各国において、その輸入に際し、輸入税を免ぜられること蜷川は、この論文を1月26日にジュネーブに送付した。また別にタイプして、1919年2月1日にカンヌで開かれた5大国赤十字会議に持参し、イギリス、フランス、イタリア、アメリカの代表に配布している。これより先、1919年1月下旬、ウィルソン大統領の顧問であるハウス大佐はパリの日本大使に人道研究ジャーナルVol. 4, 2015157