ブックタイトルThe Journal of Humanitarian Studies
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The Journal of Humanitarian Studies
Journal of Humanitarian Studies Vol. 4, 2015ぎの短期的な慈善活動を超える、新たな対応の必要性が認識されつつあったのです(7)。アンリー・デュナンを始めとする赤十字の創設者たちは、この必要性を強く認識していました。そして、以下の二つの目標を達成するために、国際的な支援を要請しました。第一の目標とは、負傷者を公平かつ中立的に支援する、国家から独立した永続的な組織を設立すること、第二の目標は、敵の負傷兵、医療従事者、民間人に対して国家がどのような待遇をするのかを定める国際的な規則を策定することでした。1863年のICRCと最初の赤十字社の設立、翌年のジュネーブ条約(第一条約)の締結は、人道支援活動および国際人道法の誕生を意味するものとなりました(8)。デュナンやその他赤十字の創設者は、紛争時に負傷者を支援するための救援組織を平常時に設立する、という明確かつ限定された目標に加えて、戦争行為に人間性を与えるという大きな野望を抱いていました。このような野望は、平和主義には及ばないものの、非常に理想主義的なものに聞こえるかもしれません。しかし、その実現に向けた活動はむしろ、集中的かつ現実的なものでした。例えば、独立していながらも共通の目標を持つ各国の救済型社会の間でネットワークを樹立したり、国際法の成文化を実現したり、という取り組みを展開します。■紛争の150年と、発展、適応および実行の能力近代では当たり前となっている様々な概念や手法、アプローチは、ICRCの設立時から存在していました。そして、これらを分析することで、国際赤十字・赤新月運動が時代に合わせてどのような変化を遂げ、過去の教訓を反映させ、過酷な状況の中でも新しい手法を導入し続けてきたのか、説明することができます。対話、説得、そして人道的な外交第一に、赤十字の設立は、市民社会が国際的な連帯を促進するうえでいかに力を発揮できるのかを示すものとなりました。「ソルフェリーノの思い出」の出版、そして国際赤十字・赤新月運動の設立を導いた1863年10月の最初の国際会議における一般市民の集結は、真の人道的なアドボカシー・キャンペーンであったと言えるでしょう。今日の市民社会が持つ、国内および国際政治のアジェンダを設計・影響するという役割を予示するものであったとも考えられます。ICRCと国際赤十字・赤新月運動はこれまでに「人道的な外交」における広範囲の経験を蓄積してきました(9)。アンリー・デュナンは当時、ツイッターのアカウントは持っていませんでしたが、当時のコミュニケーション・ツールを駆使することで自身の考えを広め、権力者に働きかけました。電報を始めとする近代のコミュニケーション技術が発展するとともに、国際的な連帯は急成長することとなります(10)。戦場での直接的な経験があるデュナンは、当時の政治的指導者に説得力を持って向き合うことができました。ICRCは現場に根ざした活動を行い、助けを待つ人々との密接な関係を築くことで、被害者の声を正当に代弁することができます。これらの特徴はまた、ICRCが人道支援活動や法を発展させ、革新的な手法・対応を導入する際の、妥当性および能力の前提条件ともなります。ICRCは民衆の叫びによって生まれた組織ですが、紛争当事者と接する際の優先的な手法として、直接的かつ機密の対話を用いてきました。この手法はICRCの活動の中核ともなっていますが、透明性を求める国際的な世論に疑問視されることもあります。しかし、こうして二者間で行われる14人道研究ジャーナルVol. 4, 2015