ブックタイトルThe Journal of Humanitarian Studies
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The Journal of Humanitarian Studies
Journal of Humanitarian Studies Vol. 4, 2015を始めたこと、赤十字が平時事業を行うことは首相オランドも同意している、と報告した。アドールは、日本赤十字社のパリにおける活動を賞賛し、自らパリの日本病院を訪ねたことがあると話し、蜷川の見解を求めている。彼は外国語で充分に自分の意見を述べることの困難を断り、赤十字事業を平時に行うことは、すでに「久しき以前より」委員会にも話してあるし、赤十字機関紙にも論文を寄稿してある。自分としては、たんに各国赤十字社の間に、私的約束を結び、意見の交換をするのでは不十分である。各国民の間に、人道上の義務を課す必要を信ずる。その詳細は論文を読んで欲しいとしている。アメリカは、引き続きカンヌで技術的問題を研究し、これを国際会議の議論の基礎とするという提案を行い、国際委員会も賛同した。しかし、このカンヌ会議を国際委員会の会議の一つとするようにというデヴィソンの提案には反対した。これは赤十字の中立との関係から問題ある発言であり、デヴィソンに「法律上の見地より、其の失当なる事に付き意見を述べた」とある。イタリアの代表も赤十字条約の改定の必要なしと考えるが如何かとアドールに問いかけた。彼は「改定するに及ばずと考える」と発言している。何故、必要がないかを述べていないと、蜷川は不満を漏らし、イタリアの代表は「法律家にあらず」と切り捨てている。アドールの意見も「ジュネーブ条約は、久しき尊き歴史ありて、容易に動かすべからずと云うにあり」というもので、なんら有力な理由とはならない(57)と書いている。平時事業を平時に拡張することについては、参加者全員意を同じにしているので、彼は後日開かれる赤十字国際会議で意見を述べればいいと、持論を持ち出さないまま議論は進んでいる。アメリカからは、人道事業を平時に拡張することについて、世界の世論に訴える必要があるとして、パリで同盟列国の首脳と日本の全権大使、新聞記者を招集して、5大国の赤十字代表とICRCの代表が、発表するようにしたいと提案。アドールはこれに賛成しない。国際委員会の名において、平和回復後の30日目にジュネーブで赤十字国際会議を開催するという回章を、世界の赤十字社に送付することにしたいとしている。ICRCは1919年2月13日付けの同文通牒で「赤十字はこれより人類一般の利益となる平和事業に向かうべきもの」として第10回国際会議をジュネーブに開催する。会議のテーマは赤十字の平時事業とする、としている。同じ11月27日にアメリカ赤十字が独自にウィルソン大統領に同じ考えを提出したのは何とうれしいことか。各国の赤十字社、政府からこの考え方への支持が寄せられ、これらの新しい事業への全般的な賛同を得たことを喜びとする。半世紀前に戦争は避けられないが、苦痛を軽減することはできると考えてきた・・・相互の信頼と共通の慈悲をもって疾病や突然起こる災害に赤十字が活動することはとても大事なこと。伝染病を防ぐために相互に助け合うことが望まれている。11月27日の書簡で、ICRCがこのための国際会議を開催することを提案したのもこの目的のためであった。これに5ヵ国の赤十字社が賛同してくれた。この会議はジュネーブで開催される。会議は講和締結後30日後までは開催されない。5ヵ国の赤十字社が提案している問題は、主として結核、マラリア、戦争によってますます困難になり、すでに各社が関与している諸問題であり、これらは子どもの福祉、衛生、公衆衛生にかかわる事柄である。いくつかの社が特に関心を寄せているのは戦争の犠牲者のことであり、それは身体障がい者、病人、未亡人、(58)孤児であり、また戦時や伝染病や、災害時に救護する看護婦協会の設立である。日赤社史続稿上巻では、赤十字の平時事業展開という、「これらの斬新なる計画が此の如く広範ある同情を得たるは人道研究ジャーナルVol. 4, 2015161