ブックタイトルThe Journal of Humanitarian Studies

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概要

The Journal of Humanitarian Studies

Journal of Humanitarian Studies Vol. 4, 2015会し、赤十字社連盟のことを話しているので、この時に、国際連盟規約第25条のことを聞かされたのかもしれない(67)。4月16日には、ホテル・レジナで5国赤十字代表会議が開かれた。イギリス赤十字のスタンレーが初めて会合に出席。遠慮なく、イギリスのために有利になるような意見を述べた。さすがにイギリス人だと日記に蜷川は書くが、具体についてはふれていない。会長をアメリカがとるのであれば、イギリス人に事務総長職を与えよと言うのが、彼の見解であった。この会議での問題は2つあって、第1は東欧におけるパラチフス発生についての救援であり、第2は赤十字社連盟の規約についてであった。東欧の問題については、遠く日本より医師、物品を送るのは、海運の不便な当時、さしあたり不可能なので、日本は除外されたいと発言している。また、数年後に事務局運営経費の分担金制度を取り入れるが、当分の間は、アメリカの寄付金によること、前の案にあった信託局を廃止して、連盟の財政は理事局で取り扱うと定める修正を行っている。理事局の委員は先の案で9人だったのをイギリス案を入れて15人以下と改め、5大国赤十字社つねに1名宛の委員を任命することとしている。午後の会議で、アメリカの提案した赤十字社連盟規約の修正を協議している。国際連盟の規約第25条は「聯盟ハ全世界ニ亘リ健康ノ増進、疾病ノ予防及苦痛ノ軽減ヲ目的トスル公認ノ国民赤十字篤志機関ノ設立及協力ヲ奨励促進スルコトヲ約ス」とある。つまり、世界の医療・保健・健康に関する活動と特に災害や紛争時の救護を各国赤十字社の役割と規定し、国際連盟のお墨付きを与えたのである。5社会議は、この第25条と赤十字社連盟規約第2条を完全に同一の文章として、符合させることに同意した。蜷川はこの旨、4月17日に日本赤十字社に打電するとともに、翌日牧野全権に提出し、陸軍省にも打電した。日本赤十字社には報告書を詳述して送付している。4月20日、日本赤十字社は赤十字社連盟に加入するとの返電をしている。赤十字社連盟設立についてデヴィソンからジュネーブのICRCに対して報告したところ、ラッパール委員(William Emmanuel Rappard, 1883-1958)とクラメル女史がパリに派遣され、抗議文を提出している。その文書によると、従来の赤十字社はジュネーブのICRCによって連携しているのであり、赤十字社連盟はICRCに代るものなのか、それとも平時事業だけを担当し、戦時事業は依然としてICRCによるのかどうか。国際赤十字の基盤が揺らぐことを恐れる。外交と人道とを同一視しており、世界の世論は赤十字社連盟の成立に反対するのではないか。ICRCとしては、5国委員会として、医学上の研究とその研究の普及につとめるだけにし、赤十字社連盟のような新しい組織は、後日に譲り、世界の赤十字が共同協議すべきではないかとしている。4月30日ICRCのクラメル女史から蜷川は書面で会見を申し込まれた。アメリカ人は法理的見解と赤十字の歴史を理解していない。貴方はこのことを良く知っていながら、何故、赤十字社連盟を組織することに努力されたのか。これは赤十字の革命だ。どのような論理でこのようなことを敢えてされるのか、と詰問されている。蜷川の答えは明確であった。昨年以来、自分がどのような発言をし、努力してきたかをご承知のことだろう。ICRCが、初めから自分の主張に同調され、国際委員会の名で、この新事業が行われていれば、今日のような結果とはならなかったはずである。責任はなんら自分にはない。5月2日、アドールの要求で、ホテル・ムーリスで、ICRCの幹部数名と5大国赤十字社の代表とが会見した。アメリカは、この企画は、順次に振興してきたもので、ICRCに反対して、行動する考えはない。共同して人道のために尽したい。フランスは、国民の感情は容易にドイツ人と和人道研究ジャーナルVol. 4, 2015165