ブックタイトルThe Journal of Humanitarian Studies
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The Journal of Humanitarian Studies
Journal of Humanitarian Studies Vol. 4, 2015機密の対話は、人道的な視点から評価した際に有効であると証明されています。ICRCが支援・保護する人々にアクセスするにあたって、重要な根拠となるのです。無論、このような対話が無条件かつ決定的な手法であるとは限りません。当局との対話をすることで、この対話からどのような進歩が達成され、その進歩が対話の質と合致するものであるのか、ICRCは見極めながら活動しています(11)。支援を必要とする人々へのアクセスを可能とする、原則に基づいたアプローチ1864年に締結されたジュネーブ条約によって、中立性と、負傷兵、医療従事者と特定の人道機関に対する保護が初めて保障されました。そして、第二次世界大戦後の冷戦下の環境の中で、ジャン・ピクテを中心とするICRCは、ICRCおよび国際赤十字・赤新月運動の基礎となる原則に関する一貫した構想を確立します。その結果、1965年にウィーンで開催された第20回赤十字国際会議において、「赤十字の基本原則」が採択されます(12)。この際に定められた人道、公平、独立、中立の原則は、周囲の人道セクターにも多大な影響を及ぼしました。支援を必要とする人々にICRCがアクセスするためには、紛争当事者にICRCは以下のような団体であることを理解してもらうことが有効となります。第一に、ICRCは政治的な圧力から独立しています(これは、ICRCの資金源が多様である一方で、その統治はスイス国民によって一元的に行われているため可能となっています)。第二に、ICRCが持つ唯一の関心は、どちらか一方の側につかず、紛争およびその他暴力の被害を受ける人々を公平に保護・支援することです。「中立性を保つことは道徳に基づいた判断ではなく、人道支援を必要とする人々にアクセスするために最も有効な手段なのです」とフィオナ・テリーは説明します(13)。中立と独立が、支援を必要とする人々にアクセスするための手段だとすると、公平と人道は人道主義の哲学を象徴する原則です。何れの原則にも妥協の余地はありません。ICRCは設立以来、紛争時の支援を行うにあたって、これらの原則に基づいた人道的な活動が必要であると主張してきました。この原則は国際赤十字・赤新月運動を結びつける中核的な価値であると同時に、機能上の重要性も備えています。例えば、人道支援活動と、それが政治的な主体によって利用されてしまう危険性をめぐるジレンマに対して、この原則は有力な評価基準となります。150年前と比べて、現代にははるかにたくさんの国際的な連帯や人道支援活動に携わる国際機関、NGOが存在します。しかし、紛争地域で活動ができる人道支援組織の数は未だに限られています。ICRCは自らの原則と、これまで発展・改善されてきた組織内の政策(Doctrine)を厳守することで、支援を必要とする人々に働きかけ続けていくことを目標とします。法の力今日に至るまで、国際人道法とその執行メカニズムは、変化する紛争の現実に対応するために発展し続けてきました。また、紛争やその他暴力の被害者に人道支援を届けることと、そのような状況に適用される法を制定することを組み合わせた活動は、ICRC特有のものと言えるでしょう。ICRCが支援を必要とする人々と密接な関係を築き、こうした支援・保護活動を行うことについて、アンドレ・マルローは著書「希望」で「良心を経験に最大限反映すること」と言及しています(14)。ジュネーブ条約が採択されて以来、武力紛争を規制する法は持続的かつ漸進的に発展してきま人道研究ジャーナルVol. 4, 201515