ブックタイトルThe Journal of Humanitarian Studies
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The Journal of Humanitarian Studies
Journal of Humanitarian Studies Vol. 4, 2015した。しかし、これは現代においても慎重に扱うべき問題として考えられています。その理由は、国家の主権、安全保障および軍事的配慮と、人道的な配慮の間に、断固とした緊張関係が存在し続けているからです。また、法の発展は停滞期に陥ることもあり、この際には、それ以前の成果が疑問視されることもありました。このような理由から、法や法的保護のメカニズムの発展を保障するためには、常に変化し続ける戦争行為や兵器の現実に注意を払うことが必要となります。ICRCはこの点において数々の成果を残しており、それは時に独自の試みとして、もしくは国際社会の他主体の協力のもとに実現されています。1949年のジュネーブ諸条約と追加議定書から、近年では1998年のオタワ条約や2008年のクラスター弾に関する条約に至るまで、ICRCの成果は幅広いものとなっています。ここで特に注目に値する二つの取り組みは、2006年に発表されたICRCによる慣習国際人道(15法の研究と付属するオンライン・データベースの作成)、そして、目下進行中であるジュネーブ諸条約と追加議定書への論評(Commentaries to the Geneva Conventions and the AdditionalProtocols)の改訂です(16)。ICRCの創設者たちは、科学的・技術的進歩が人類にとってのリスクにもチャンスにもなり得るという二面性を理解していました。ICRCおよびReview誌は現代においても同様の警戒心を抱い(17ており、それはReview誌の「新たな技術と戦争(New technologies and warfare)」号)でも描かれています。しかし、法の発展というのは、数々の妨げを乗り越え、これまでの脆い成果を保存することによって実現します。ICRCは1868年に、2年前に締結されたジュネーブ条約を完全に再交渉する提案を持ちかけられますが、それに抵抗しています(18)。また、既存の法の正当性・妥当性が疑問視される度に、ICRCはその法を再確認する作業を行わなければいけません。例えば、2011年9月11日の同時多発テロ後の10年間、アメリカが展開した「対テロ戦争」は法の進展および妥当性に新たな疑問を提示しました。しかし、グアンタナモ収容所における被拘束者の処遇などに関する、アメリカとの困難な交渉において、ICRCはその信念を頑固として保持しました(19)。人道の力デュナンの夢は「人道の力」を解き放ちました(20)。ICRC創設者たちの主要な目標は、公平に支援活動を行う、政府から独立した組織を各国に設置することでした。1863年はICRCだけでなく、今日国際赤十字・赤新月運動と呼ばれるようになった、各国の赤十字・赤新月社、国際赤十字・赤新月社連盟(IFRC)、そして赤十字国際員会(ICRC)の誕生の年でもあるのです(21)。国際赤十字・赤新月運動の強みは地域に根差した活動と、187か国における9,700万人のボランティア、会社および職員の献身的な働きです(22)。この多様なメンバーシップは、被害者に密接に寄り添うだけではなく、彼らのニーズを効率的に評価することを可能とします。今日、国連諸機関や国際NGOなどの主要な人道支援組織は、現地のパートナーを探し、危機に対応するための現地の能力を育てることの重要性をますます意識するようになっています。国際赤十字・赤新月運動は常にそのような取り組みに注力しており、それは現代の多極化した世界において非常に重要な財産となっています。ICRCの活動はあらゆる面で各国の赤十字・赤新月社のボランティアや職員の動員なくして成り立ちません。また、国際赤十字・赤新月運動は、現代の複雑化および長期化する危機に必要とされる、多角的な対応をとることができます。16人道研究ジャーナルVol. 4, 2015