ブックタイトルThe Journal of Humanitarian Studies
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The Journal of Humanitarian Studies
Journal of Humanitarian Studies Vol. 4, 2015インタビュー1赤十字150周年ペーター・マウラー2赤十字150周年にどのような意義があると考えていますか?この150周年は、今後のICRCの方向性について真剣に考える重要な機会です。ICRCの創設者はもともと、国境を越えた国際的な人道支援組織の設立を心に描いていました。しかし、その後数十年間数々の戦争が発生し、多数の傷病者や祖国から遠く離れて囚われる捕虜、戦争の被害を受ける何百万もの人々を巡って、これほどの連帯感が湧き上がることまでは予想していなかったでしょう。ICRCは紛争の被害を軽減し、様々な暴力にさらされる弱者の苦しみを和らげるために幾多の課題に直面し、比類のない貢献を展開してきました。これが150年の間続いてきた人道的見地と活動、そのものであると言えます。私は一歴史学者として、「赤十字150周年」そのものに大きな意味がないことはよくわかっています。なぜなら、歴史的に重要な出来事は、通常、誕生日や記念日に起こるものではないからです。もちろん、一世紀半の赤十字の経験を証明する、象徴的な数字には違いありません。歴史というものは、未来について考えるための批評的な視点を与えてくれます。したがって、この節目は、私たちのアイデンティティーや起源について考え、これまでの達成を徹底的に分析し、今後私たちが進むべき道を描き、それを基に今後の課題に対してより良い備えを行う好機となっていると言えるでしょう。人道危機の状況で支援を必要としている人たちへより正確かつ効果的な援助が届けられるように、ICRCは今後数年間の活動において、特にどの分野に注力することが適切なのか決断しなくてはなりません。150周年を単に記念して終わるのではなく、未来を志向し、再び人道活動について考える機会にすべきです。結局のところ、私たちの活動への意欲は、アンリー・デュナンが画期的な著作「ソルフェリーノの思い出」の最後のページを書き終えた時から変わっていません。しかし同時に、紛争の背景や状況の複雑化にともない、私たちの活動もそれに応じて変化してきました。この「150」というのは、私たちが自分自身と向き合い、変化に適応し、その過程で未来へ向けた新しい視点や活動力を引き出すことを象徴する力強い数字であると考えます。1このインタビューにおいて、マウラー総裁はICRCの様々な歴史を振り返り、彼自身が感じている組織の発展を語る中で、特にICRCや他の人道機関が直面する課題に焦点を当てている。このインタビューは2012年10月10日にジュネーブ本部にて行われ、聞き手はInternational Review of the Red Cross編集長のヴィンセント・ベルナルドと編集アシスタントのエルビナ・ポセレットという。このインタビューの原文は、International Review of the Red Cross, Volume 94, Winter 2012, No. 888, pp1209-1221に掲載されている。電子版:https://www.icrc.org/eng/resources/documents/article/review-2012/irrc-888-interview.htm2ペーター・マウラー氏はスイスのベルンで歴史と国際法の博士号を取得後、1987年にスイスの外務省に入省。ベルン、プレトリア、ニューヨークで様々な役職を歴任。2000年にベルンのスイス外務省本部大使兼人間安全保障課長に任命され、2004年にはニューヨーク国連本部のスイス大使および常任代表となる。2010年1月にはスイス外務長官に就任。ヤコブ・ケレンベルガ―氏の後任として、2012年7月1日にICRC総裁に就任する。2人道研究ジャーナルVol. 4, 2015