ブックタイトルThe Journal of Humanitarian Studies

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概要

The Journal of Humanitarian Studies

Journal of Humanitarian Studies Vol. 4, 2015に伝える重要性が高まっています。すなわち、私たちの基本原則をよりはっきりと説明し、認知度を高める必要性が出てきているのです。医療活動については特に懸念しています。紛争中に病院が悪用され、軍用化されることで医療従事者に対する危険が急増しているため、救急車や、医療機器、医療従事者は標的にしてはいけないということを繰り返し提示する必要があります。また、最近の紛争にまつわるメディアの報告によると、人道主義を支持しているであろうと思われるヨーロッパにおいても、ある一部の政治家は援助されるべき「良い」被害者と援助をする必要のない「悪い」被害者がいると考えている、とのことです。このような状況の中で、私たちの課題は、中立・独立・公平の真の意味を説明すること、そして、支援を必要としている人たち全てに手が差し伸べられるよう、基本原則に則ったアプローチを尊重することの重要性を呼びかけていくことです。もう一つの大きな課題は、国家主権に起因しています。多くの政府がリーダーシップを発揮しようとしていることは、非常に好ましい傾向だと思います。実際、各国が自らの力で問題解決ができるようになるには、ガバナンスと国家主権は強化されなければいけません。しかし、残念ながら、そのような主張にもとづいて、政治的な理由で独立の組織に圧力をかけたり、独立の調査や援助を排除したりする政府もあります。このような状況においても、国家と非国家主体の両者が、中立かつ公平な対応の基盤となる独立した人道支援活動の重要性を理解しなければなりません。ソマリアの事例のように、政府が政治的アジェンダおよび平和執行にまつわるアジェンダに、援助や開発政策を取り込むことがあります。この場合でも、援助を必要とする人々を、その支持政党にかまわず全員支援するためには、政府は独立した人道支援活動の誠実さを尊重しなければならないのです。政府や国際的な組織が統制をとれない中央アフリカ共和国、2014年ICRCが運営する状況では、ICRCが効果的な方法で人々にアクセスしなバンギの地域病院で、患者と対話する。ければなりません。cRadih Mazboudi/ICRCほかにも課題は山積みです。アクセスの確保について客観的に評価することは難しいと認識していますが、アクセスの確保と安全な活動との両立を継続することも大きな挑戦だと考えます。主観的に見ると、今日ではたくさんの人道支援組織が活動の場を増やせば増やすほど、援助もたくさんの人に行き渡るようになっています。同時に、私たちは戦略的な危機にもさらされています。ICRCの大きな特徴かつ強みである、紛争・被害者・戦闘員の最も近くで活動すること、という根幹が脅かされているのです。なお、ICRCは他のどの人道支援組織よりもこの影響を大きく受けていると思います。紛争の最前線から離れたところで、素晴らしい活動を行っている組織もあります。また、本部の活動が中心となっている組織や、現地のNGOが大きな役割を担う組織もあります。ICRCはその中でもとりわけ、全紛争当事者と関わり、支援を必要とする人々に寄り添うということを自分たちの伝統かつ強みにしてきました。そこで私たちは、恐怖の論理、つまりICRCを攻撃し、活動に悪影響を及ぼす存在に対して、屈してはいけないと考えます。私はICRCに入る前から総裁になった後も変わらず、ICRCについて敬服していることがあります。それは、交渉能力と、紛争当事者を巻き込むことにより彼らの態度を変えようとする姿勢です。これらは今後も継続して、磨きをかけていかなくてはなりません。6人道研究ジャーナルVol. 4, 2015