ブックタイトルThe Journal of Humanitarian Studies
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The Journal of Humanitarian Studies
Journal of Humanitarian Studies Vol. 4, 2015マリ北部でICRCが成し遂げたことは賞賛に値するということも付け加えたいと思います。数カ月前だったら、政府関係者は「このような非常に危険な状態で、業務の遂行は不可能だ。全ての戦闘員との接触が難しい中では、ICRCであっても活動はできない」と言っていたでしょう。しかし、私たちは接触に成功し、安全に活動できるよう粘り強く交渉を行いました。これはアクセスを確保するという課題にどのように対応すべきか、適切に表した一例であると思います。現場での課題以外に、ICRC内部の課題は何ですか?150年の活動の中でICRCは主要な国際的組織になり、現在は80カ国以上で13,000人を超える職員が働いています。また、他の国際組織と比べても、ICRCの任務は保健・衛生、栄養、行方不明者の捜索や収容所の監視など多岐にわたっています。このような大規模で広範囲な活動を行い、世界中で最も支援が必要な環境で力を発揮するためには、実質的で柔軟な管理体制が必要です。実際に数年前のICRCと比較すると現在は網羅的かつ機動的に、IT機器を駆使した管理が行われています。しかし、まだまだ改善の余地が残ります。私は、新しい技術が運営方法の軸になると考えていませんが、効率的に業務運営の後押しをするだろうとは思います。例えば、四大陸にまたがって一年間に170万スイスフラン超4(約210億円)を援助物資に充てている組織として、物資供給を可能な限り効率的に行うため、それをさらに専門化する必要があります。これには、強固な供給プロセスとその手段の仕組みが必要です。そうすることで、支援を必要としている人々へより迅速に辿り着き、ターゲットを絞り込み、より適切な方法で援助することが可能になるはずです。それには、私たちがデジタル化による質的飛躍を達成する必要があります。また、世界に広がる人道的なコミュニティに深く根差しているボランティア活動と人道支援活動の専門化、この二つをいかに組み合わせるか考えなくてはなりません。人道的なコミュニティの強みの一つは、いまだにボランティアが活躍する場がどこにでもあり、特に緊急時にも大きな力を発揮することです。私も視察中、たくさんのボランティアが人道支援活動に従事しているのを見て感銘を受けます。しかし同時に、紛争は昔に比べて複雑化しており、それにともなって組織のネットワークも複雑になっているため、引き続き、人道支援活動従事者の役割も期待されています。私たちが解決すべき課題は困難なものばかりであり、それらは極めて複雑な法的枠組みを取り扱っています。全ての階層の人道活動従事者に専門的で、集中的、効果的なトレーニングを行わずに、活動させるようなことがあってはなりません。最後に、5年後、10年後の人道支援活動を改善し、人道支援活動の専門的なマネジメント能力とリーダーシップ能力の強化を願うとするならば、電子プラットフォームを通して、私たちの業務をデジタル化し、情報交換をもっと簡便化し、現代技術を駆使することも重要となります。組織のメンバーをネットワークでつなぐことで、支援と保護分野での運営能力と法的能力を結び付けることが徐々に可能となるでしょう。階級組織の仕組みの中にいる限り、構造的な制限に直面することは避けられませんが、今後数年でコミュニケーションが円滑になり、ICRC内部および私たちの重要なパートナーとより良い関係が構築できたなら、この組織はもっと強くなると思います。4編集者注:ICRC Strategy 2011-2014内、Section‘Delivery of Assistance Items in 2011’482ページ~483ページをご覧ください。人道研究ジャーナルVol. 4, 20157