ブックタイトル平成25年度「学校法人日本赤十字学園教育・研究及び奨学金基金」にかかる教育・研究事業報告書

ページ
33/74

このページは 平成25年度「学校法人日本赤十字学園教育・研究及び奨学金基金」にかかる教育・研究事業報告書 の電子ブックに掲載されている33ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

ActiBookアプリアイコンActiBookアプリをダウンロード(無償)

  • Available on the Appstore
  • Available on the Google play
  • Available on the Windows Store

概要

平成25年度「学校法人日本赤十字学園教育・研究及び奨学金基金」にかかる教育・研究事業報告書

620万人(2011)、49少数民族が住む多民族国家である。保健医療については、平均寿命は64.8歳、乳児死亡率も65人(出生1000対)であり、近年改善が見られるものの周辺諸国に比較して、遅れている現状である。デング熱、マラリア、腸管寄生虫症(以下寄生虫症とする)、腸チフス、結核などが今なお蔓延しており、感染症がラオスの死因の上位を占める。回虫(Ascaris lumbricoides)、鞭虫(Trichuris trichiura)、鉤虫(Hookworms)に代表される寄生虫症は、NTD(Neglected Tropical Diseases:顧みられない熱帯病)のひとつとして、WHOの保健対策の重要課題でもある。ラオス全国調査(2002)では寄生虫症の感染率は61.9%と報告された(Rim et al,2003)。これらの寄生虫症は、日常の不衛生な生活行動から経口、または経皮により感染する。慢性的な感染により栄養失調、貧血、易疲労、下痢、腹痛などの症状が現れ、さらに重症化すると、腸閉塞や腸穿孔を起こす場合もある。また、学童の罹患では、学習効果の著しい障害、成長や発達への影響が明らかになっている。その対策には、駆虫薬の内服による駆虫と、再感染防止のための健康教育が平行して行われる必要がある。2006年WHOにより全国の小学校で駆虫薬一斉投薬(Mass DrugAdministration,以下MDAとする)が開始され、回虫の感染率は低下傾向であるが、鞭虫、鉤虫は横這い(山本他,2008)である。また、再感染対策としての健康教育は、各学校の自助努力に任せられているのが現状であり、十分な対策がなされているとは言いがたい。駆虫は、効率性、簡便性の点から、WHOではMBZ500mg1回投与が推奨されている。申請者は、国内で入手可能な駆虫薬の成分分析、効果的服用方法、学童の薬に関するコンプライアンスに関する先行研究(山本他,2004,2005,2006,2011;Ishida et al 2006)に取り組んできた。これらの結果から、MBZ500mg1回の服薬では、鞭虫、鉤虫には効果が弱く(山本他,2004,2005))、混合感染症例が多い当該地域においては、本邦標準であるMBZ100mg6回の分割服薬が最も効果的(山本他,2006)であるという結果を得た。現在は、感染率が下がらない鞭虫、鉤虫に対するより効果的な駆虫方法へプロトコールを変更していくため、MBZ100mgの6回投与による駆虫効果に関する基礎データを蓄積している。再感染防止の観点からは、開発途上国では子どもをメッセンジャーとし参加者だけでなく、その家族や地域住民に教育効果を波及させることを目的としたSchool toCommunityの手法により学校を中心に健康教育が行われている(小林他,2005)。しかし、ラオスでの申請者の先行研究において、小学校での集団健康教育は、《話好きの子どもが伝える》傾向にあったが、その《子どもが親に話した内容》は、実際に経験したこと、嬉しかったことなど、断片的な内容に限られていた。特に、学童という発達段階において、感染原因や予防方法などの知識面の伝達の困難性が把握された(山本他,2010)。一方、母親を対象に行った調査では、再感染予防行動として,手洗い,トイレの使用,生野菜の洗浄,草履の着用は,感染対策としての“知識(意識)”を伴わないまでも,やらなくてはいけないという“態度”はあり,“実施”しているという結果であった(山本,2012)。しかし、これらの予防行動の“実施”は対象者の主観による結果であり、現在の感染率の- 31 -