ブックタイトル平成25年度「学校法人日本赤十字学園教育・研究及び奨学金基金」にかかる教育・研究事業報告書

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概要

平成25年度「学校法人日本赤十字学園教育・研究及び奨学金基金」にかかる教育・研究事業報告書

イレが未整備である。駆虫薬の駆虫効果の問題も考えられるが、環境面の影響も考えられる。鉤虫は主に経口的に感染するズビニ鉤虫(Ancylostoma duodenale)と、主に経皮的に感染するアメリカ鉤虫(Necator americanus)の2種類があり、ラオスには、アメリカ鉤虫が多いといわれており、感染幼虫の経皮的に侵入により感染が起こる。よって、鉤虫は手洗いの介入によって、結果が左右される可能性は少なく、裸足で土壌を歩くことが感染に関連してくるといえる。よって、トイレのない環境が、糞便中の虫卵を土壌に排出する主たる原因となり、感染源を生み出しているのではないかと考える。今回の調査では、草履着用の有無については、検討していないが、土壌中に虫卵および虫体が排出されやすい環境であることを念頭に、手洗いの実施、トイレの使用とともに、草履の着用を含めた衛生教育が必要であると考える。一方、手洗い介入なしの学校では、学校6のみが、プレコントロールレベルよりも大幅に減少している。学校6については、先述のように、診療所が近くにある環境であり、衛生意識が高いことが関連しているのではないかと考えられる。改善しなかった学校では、半数以上の学童が陽性である学校もあり、駆虫薬の投薬方法の検討とともに、衛生環境、衛生行動を含めたさらなる調査および対策が必要であると考える。鞭虫については、手洗い介入の学校では、学校234がプレコントロールレベルより減少している。学校1は、プレコントロール時からほとんど変化がない。この学校では、手洗い教育のみならず、分割投与による駆虫も行っていることも相まって、回虫・鉤虫ともに減少している。なぜ鞭虫だけが減少しないのか、現在の調査からは述べることができないため、今後、再検査を含め、継続的にフォローアップを行っていく必要がある。一方、手洗い介入を行わなかった学校では、学校6のみが半減した。プレコントロール時から16.5%と、もともと感染率が低い学校であり、先述のとおり、診療所が近くにあることが影響しているのではないかと考える。その他の学校では、ほぼプレコントロールレベルと変わらないため、手洗いの実施は、鞭虫の再感染防止に有効であると考える。寄生虫症感染の関連因子についての先行研究は、調査対象国によって研究結果に相違があり知見が一致しておらず、さらに、手洗いは、回虫陽性率の減少に直接的な根拠はないと報告されている(Fung et al,2009)。今回の調査結果でも学校によりばらつきがみられたものの、手洗い介入群では、非介入群に比べ、最終の陽性率は少ない傾向にあった。手洗いとの直接的な効果は、今回の研究方法では、立証できないが、学校で手洗いを励行するということが、草履の着用やトイレの使用など、清潔観念の改善において、全般的によい影響を与える可能性が期待できる。(3)村落における対策の効果学校2の所在する村落の住民の虫卵陽性率は、回虫については、介入前からほとんど問題がない状態であったが、鉤虫、鞭虫ともに、介入前の2012年5月の結果から2年後2014年3月の結果に比べて、大幅に改善がみられた。村民に、MDAをおこなっ- 42 -