ブックタイトル平成25年度「学校法人日本赤十字学園赤十字と看護・介護に関する研究助成」研究報告書

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概要

平成25年度「学校法人日本赤十字学園赤十字と看護・介護に関する研究助成」研究報告書

も高いと報告されている。国外の救援要員のストレスについて、尾山(1998)は、職種に関係なく再体験や回避、生理的過緊張が起こり再燃の危険を述べ、派遣後の支援体制の必要性を示唆している。加藤ら(2004)は、滞在期間とストレス反応の関係とともに、上司・同僚からのサポートの低さもストレス要因であることを明らかにした。齋藤ら(2005)は現地到着後から自施設に戻って勤務するまでの期間を5つに分け、時期ごとの救護者のストレス要因の違いに着目し救護者自らが行ったストレス対処行動を明らかにしている。海外の研究文献では、台湾中部地震に救急外来で勤務した看護師のストレス体験の内容とともに、他医療専門職から得られた支援が自らにとって価値ある体験であったと明らかにしている(Shih F. et al、2002)。以上のように、救護者のストレス要因とともに心理的支援の重要性が明らかとなっている。しかし、大規模災害後の救護者に対するケアについては、いまだ救護者のセルフマネジメントに依存しており、効果的で組織的かつ継続的な支援が行われておらず、具体的な支援のガイドラインも構築されていない状態である。今年、3月11日に発生した東日本大震災では、最大震度7に及ぶ大地震、広範囲の津波被害、原子力発電所の被災にともなう放射線被爆という、世界でも類を見ない三重の災害が起こり、その中で被災地に入り救護活動を行う看護職員のストレスは計り知れない。そこで、本研究は災害現場で救護活動を行った看護職員の心のケアニーズを調査し、影響を及ぼす要因や時期に応じた対処方法を明らかにすることで、組織的かつ継続的に救護者を支援するケアシステムを構築する資料とすることを目標に取り組んだ。日本赤十字社は、東日本大震災発生直後から全国の都道府県の日本赤十字支部経由で救護班を被災地に送り続けた。平成24年9月までに派遣された医療救護班の数は935個班であった。今回の大震災は被災の範囲が広いこと、津波による被害が甚大であったこと、原発災害が加わったことから被害の規模は未曾有のものとなり、被災地の状況は悲惨で、厳しいものであった。そのような状況において、救護活動に従事した看護職員の中には、救護活動終了後に大小様々な心的反応を経験し、ケアが必要な者も少なくなかったとの報告がある。そこで、我々は、下記の課題に取り組んだ。(1)東日本大震災の直後から被災地で救護活動を行った看護職員の心的反応及びケアニーズを明らかにする。(2)救護要員が救護活動から勤務施設における日常業務に復帰後、サポートを受けた心のケアの実態を明らかにする。これらのデータ分析結果と、被災者の心のケアの専門家による指導助言をもとに、心のケアシステムを検討し、その結果をもとに心のケア研修会を開催、実施、評価を基に、「赤十字救護要員の心のケアのための派遣ガイドライン」を作成したので、報告する。2)研究方法東日本大震災の直後から被災地で救護活動を行った看護職員の心的反応及びケアニーズを明らかにし、赤十字救護要員の心のケアシステムの構築を目標に、下記の調査と研修会を行い、そ- 132 -