ブックタイトル平成25年度「学校法人日本赤十字学園赤十字と看護・介護に関する研究助成」研究報告書

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概要

平成25年度「学校法人日本赤十字学園赤十字と看護・介護に関する研究助成」研究報告書

また,近年では,看護実践が過酷なまでの「感情労働」であるということもさかんに指摘されるようになっている。医療の高度化に伴う患者の重症化,在院日数の短縮なども主要な原因となって,その状況はさらに悪化するばかりである(藤崎,2008)。患者によいケアを提供するためには,看護師自身が心身共に「Well-Being=よい状態」であることが重要であり(小林,2006),心身の不調があれば,患者の苦しみや辛さに対する本来の看護の役割である「癒し」を行うことは無理であるとの指摘もある(藤崎,2008)。さらに,看護者がHuman Careを行うには,暖かく心の通ったケア意欲が不可欠であり,看護者のケア意欲の喪失の予防が必然である(稲岡,1988)。これまで,看護師を取り巻く問題として,ストレス,バーンアウト,離職の関連要因について数々の研究が報告されている。ストレスによる身体的症状の不眠,食欲不振,頭痛,肩こり,腰痛,倦怠感などはQOLに大きな影響を与え,スタッフナースの健康に関連したQOLは国民標準値と比較して低い(上田ら,2006;八島ら2001)。これらのストレスに対し,看護師の心理的援助の必要性(石井,2003;広瀬2003,2004),ソーシャルサポートの有用性が論じられている(上野ら,2000;南ら1987)。このように,ストレスに関連し,多くの研究がなされているが,これらの結論は,“専門家への相談”や“個人の心がけ”など,個人の努力に任されて,具体的な対策は今後の課題とされている場合が多い。さらに,近年,補完・代替医療(Complementary andAlternative Medicine,以下CAMとする)が普及しつつある中,看護師のストレス等に対するメンタルヘルスの一環として,リラクセーションを促す研究結果,資料を散見する。しかし,それらも,基本的には個人の努力に任され,具体的な解決策を示唆するものは皆無といっていい(斉尾,2008)。1995年の阪神・淡路大震災をきっかけに,こころのケアへの関心が高まり,それ以後の自然災害では精神保健活動が展開されることが着実に増えている(加藤,2005)。しかし,震災後15年以上が経過しても,未だにPTSDや心身の不調に苦しむ被災者や遺族の存在が知られている(宮井,2010)。特に被災地の看護職は,被災者でありながら救援・支援者の役割を果たさなくてはならない。支援活動時のストレスは,後の心身の変調にも影響し,被災後数年経過した後でも,ストレスが高く,それが「身体」「仕事と職場」「対人関係」にも影響を与えている(小林,2010)。また,看護師は,震災に関する外傷後ストレス障害のハイリスク者であり(大澤,2006),看護職への中長期的なこころのケアの継続,ストレスマネジメントの必要性が示唆されている(大澤2006,内海2010,小林2010)。また,海外では,災害後のPTSDに対するリラクセーションの有効性についても報告されている(Hodfoll S.E.et al.,2007)。東日本大震災においても,日本赤十字社をはじめ,多くの団体によりこころのケアに関する支援が展開されたが,国内の災害後のストレスマネジメントにおいては,具体的な実践例の報告はないのが現状である。東日本大震災の特徴は,被害が壊滅的・広範囲におよび,医療機関の倒壊や遺族を失った- 29 -