ブックタイトル平成25年度「学校法人日本赤十字学園赤十字と看護・介護に関する研究助成」研究報告書

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概要

平成25年度「学校法人日本赤十字学園赤十字と看護・介護に関する研究助成」研究報告書

ら人にやってあげたい][不安になっているお母さん達にもやってあげたい]というケアリングにつながっていた。また,自身の疲れがとれることで,[疲れがとれ父にやさしくできそう]と自身の気持ちの余裕にもつながっていた。4)考察(1)被災地における看護職のストレスの実相震災直後から,沿岸の多くの病院が倒壊する中で,A病院に患者が集中していた。その状況は,震災後3年目を迎えても変わらず,人員不足もあり,震災前の忙しさにプラスの忙しさとなり,【多忙・複雑化する業務】によるストレスを抱えられていた。スタッフナースの健康に関連したQOLは国民標準値と比較して低いといわれている(上田他,2006;八島他,2001),看護職は,通常でもストレスフルな職業であることは明らかであり,さらに,今回の【震災により家庭の問題が悪化】したケースもあった。日常の多忙な業務の上に,家族の介護を強いられている看護職もおられ,心身の負担も大きいと考えられる。被災地における看護職のストレスが高いばかりでなく,看護職は被災者でありながらも,職責による使命感・責任感があるが故に,自らのケアを後回しにし,サバイバー・ギルトを強く抱きながらも,職務上,患者の被災体験に直面するという特有の苦悩を体験しているとの報告もある(山本,平尾,2014)。今回の結果からも,看護職は,ケア提供者としての職務意識が強く,【心身の緊張・苦痛がコントロールできない】など,自身のケアが疎かになる傾向が把握された。震災・震災後の復興という状況下においても,ケア提供者としての看護職の高い職務意識や献身的であろうとする姿勢が,震災という苦難を乗り越える力になった一方で,自身のケアの享受を拒否することにもつながっていることが危惧される(山本他,2014)。よって,看護職自らが,ケアを受けるべく存在であることを認識し,心身の不調をコントロールする手助けを行う必要があると考える。震災当時,沿岸から約5kmのところにあるA病院の周囲は浸水し,一部地盤が下がった所があるが,建物の倒壊はなく,震災前と変わらない光景である。しかし,沿岸部に近づくと,津波により倒壊した建物がそのまま残っていたり,更地になっていたり,震災前の光景とは一変している。被災地においては,余震も続き,ハード面の復興が十分進んでいない中,震災当時の記憶は,[忘れられない思い出][震災体験した所には近づけない]と【震災を機に変化した生活と,離れられない被災体験】として人々の生活に影響を与え続けており,[余震や地鳴りで眠れなくなり眠剤を飲んでいる][うつになっているスタッフも多い]など,【震災による精神・経済面の負担】も続いている。平常時においても,看護師の心理的援助の必要性や(石井2003;広瀬2003,2004),ソーシャルサポートの有用性が論じられており(上野他,2000;南他,1987),震災後復興期においても,心理的援助の必要性は高い。- 38 -