ブックタイトル平成25年度「学校法人日本赤十字学園赤十字と看護・介護に関する研究助成」研究報告書

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概要

平成25年度「学校法人日本赤十字学園赤十字と看護・介護に関する研究助成」研究報告書

被災地に住み,身近に震災を感じていても,「家があり家族が無事ならば被災とはいえない」という,“被災”に対する被災地ならではの考え方があること,被害の過多,また復興のスピードの違いにより,被災しなかったことや復興への気兼ねを感じ,嬉しさもつらさも表現できない状況が報告されている(山本他,2014)。本研究の結果においても,《震災の話題を避ける》,《気持ちを抑制し折り合いをつける》など【周囲に気を使い,本音が語れない状況】によるストレスが把握された。辛さや悲しさを共有すること,復興に向けた努力を認め合うことが,精神面での復興を支える一助になると考えるが,被災地の住民である看護師は,患者を含め周囲の人間は被災者であることから,本音や気持ちを表出できる相手を選んでいる。《元の生活に戻りつつある》部分もあるが,仕事を《休むことなく頑張らざるを得ない状況》の中,[ゆっくり泣く暇もなく次々普通に戻っていっている][悲しい感じもないままあっという間に3年経った]の言葉のように,《気持ち面での復興が追いついていない》面もあり,サポートの必要性が伺える。一方で,もう3年が経ち,《自立しないといけないという思い》もあり,【復興の過程での理想と現実の乖離による葛藤】の状態である。復興の過程は,その個人の被災の状況,背景,震災の受け止め方,周囲のサポートのあり方など,さまざまな要素が絡んでおり,皆一様ではないといえる。よって,被災者は,復興の過程で葛藤の中にいることを念頭におき,逃避ではなく現実を受け入れつつ前に進めるようなサポート,自分たちの力で自立できるようなサポートが必要ではないかと考える。(2)ケアとしてのアロマセラピーの効果本研究では,震災後復興期での,リラクセーションの効果を明らかにするために,アロマセラピーとしてアロマオイルを用いたマッサージによるリラクセーション介入を行い,介入前後のPOMS短縮版による量的データと,参加者本人の語りによる質的データの2つを用いた。アロママッサージによる介入前後で,POMS短縮版のT得点の平均値は「緊張-不安」,「抑うつ-落込み」,「怒り-敵意」,「疲労」,「混乱」の5因子の改善に有意差を認めた。また,語りの分析結果からも,アロマセラピーのケアを受けることで,身体面として[頭痛が軽減][痛みも和らいだ],精神面として[元気が出てきた][ストレスがなくなった]など,《心身の苦痛が緩和》するという結果が得られた。これらのことから,アロママッサージを用いたリラクセーションケアは,疲労や頭痛など身体的苦痛症状を緩和させる効果と,緊張や不安,混乱,怒り,ストレスなど精神的苦痛症状を軽減させる効果があると考えられる。POMS短縮版において,唯一有意差を認めなかった「活気」も,T得点の平均値が42.05から44.40に改善している。今回の介入方法がリラクセーションの介入であったため,気持ちが落ち着き,疲れがとれるという効果はあったが,活気がみなぎるまで回復することはなかったのではないかと考える。- 39 -