ブックタイトル平成25年度「学校法人日本赤十字学園赤十字と看護・介護に関する研究助成」研究報告書

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概要

平成25年度「学校法人日本赤十字学園赤十字と看護・介護に関する研究助成」研究報告書

1)考察介護ロボットの効果を検証するために、対象者からの言動を分析した結果、利用者の効果について、以下に考察する。導入後(前期:導入から1ヶ月まで)は、利用者は初めて介護ロボットを見て、関わりをもつことになるが、大きく2つの反応【介護ロボットへの良・不良な反応】を示していた。不良な反応(嫌悪感を示す言動)がみられる利用者には、介護ロボットの活用は不適応と判断し、良好な反応(笑顔や撫でたりする行為など)がみられる利用者との関わりを中心に介護ロボットの介入を実施した。しかし、最初はロボットへの良好な反応を見せていた利用者だったが、15分程度で興味、関心を示さなくなり、その反応が長続きしない状況をたびたび観察する。そこで、利用者における介護ロボットの【興味に対する短い持続効果】を実感する。ただし、一部の利用者は、長期間において介護ロボットに興味を示しており、理由を問うと、以前、ペットを飼っていた経験があったり、動物好きであったりすることが分かった。加えて、記憶障害があることより、常に新しいものに接している印象を受けていたのかもしれない。このことより、介護ロボットへの興味や関心に基づく行動は、【利用者の文化的背景に影響される関心や行動】と同時に記憶障害の程度に影響される行動と捉えられ、その重要性をより認識できた。また個人の反応だけではなく、グループ内での介護ロボットの介入についても試みる。介護ロボットがグループ内の話題の中心になり、その話題を通して、周囲の人とのコミュニケーションが生まれ、[活発なグループ間のコミュニケーション]に繋がっていた。しかし、一方で、介護ロボットを独占する利用者がいた場合、ロボットを利用者間で取り合うことから、口論となり、[介護ロボットの独占によるグループ内の争い]が生じていた。集団での介護ロボットの使用は、グループ内のコミュニケーションを円滑にもするが、争うきっかけにもなり、【グループ内コミュニケーションへの影響】は、グループ内の各個人の反応に大きく左右される。導入後(中期:導入1ヶ月から2ヶ月)は、介護ロボット自体が目新しくなくなり、同じような反応に飽きてくるのか、特に認知機能レベルが高い人は、[介護ロボットへの関心の低下]が顕著で、[新たな事象に興味、関心が移る]様子が見られた。最終的には、[全く興味、関心を示さない]状況になっていた。このように、介護ロボット導入から1ヶ月以上が過ぎると、【興味、関心の極端な変化】が観察される。しかし、数名の利用者は、介護ロボットが[飼っていたペットと似たような感覚をもつ]ように感じるのか、[介護ロボットの関わりの習慣化]に繋がっていた。これは、介護ロボットの機能に、触覚、視覚、聴覚の感覚機能を持つセンサーが内蔵されており、あたかも生きている動物のように反応することがペットのような感覚になるのであろう。また、また、愛情欲、好奇心などの本能的欲求も有している。このような本能的欲求に近い機能があるので、あたかも人がペット動物と触れ合うように、人とペット・ロボットの間にコミュニケーションが生まれると考えられている3)~5)。そのような人は、積極的に介護ロボットを毎日探す、挨拶する、撫でる、「かわいい」と声を- 71 -