ブックタイトル平成25年度「学校法人日本赤十字学園赤十字と看護・介護に関する研究助成」研究報告書

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概要

平成25年度「学校法人日本赤十字学園赤十字と看護・介護に関する研究助成」研究報告書

れだけの人数が必要なのかという点である。これは、他の団体の活動とも関係があるだろう。第三は、医療チームに帯同する活動と、心理社会的支援に特化したチーム型で活動することの区別とその評価である。特化したチームの目標はどこが違うのかということでもあり、もしも違うとすれば、違う内容の養成が必要ではないかということでもある。第四は、センターやコーディネーターなどの組織の評価である。どのようなメリットデメリットがあったかという評価でもあるが、そもそも、どのような役割を果たすべきであるのかということであり、医療救護活動のシステムの中に、どのように位置づけられるのかということでもある。2)心理社会的支援の評価ここでは、上にあげた論点を評価していきたいが、その前に、被災者支援と救援者支援の区別を考えておきたい。実は、さまざまな心理社会的な支援活動において、その支援のはじまりの多くは、支援者に対する活動であった。これは、赤十字においても同様であったと考えられる。そして、支援法や内容でも、内部のスタッフである救援者に対するものが先行して開発され、それらを準用する形で、一般対象のものが経験的に工夫されてきた。そして、このことが、さまざまな混乱のもとにあるともいえる。救援者は、被災地ではない場所で動員される。そして、被災地での活動の後、動員を解除される。したがって、救援者への支援は、動員にともなって、決められた救援の役割をスムーズに行うことと、動員の解除によって、全く被災のない地域に戻って、日常の業務への復帰がスムーズに行くことをめざすものである。心理的デブリーフィングは、動員の解除と日常復帰がうまくいくように、救援活動の困難を集団で確認し、活動内容に対して仲間で相互に承認を行い、日常生活のルールに復帰するために、経験的に生まれてきたものである。その前提は、動員の解除後は、継続的な仲間関係があり、組織によって完璧に安全が確保されていることにある。一方で、被災者の災害経験においては、破壊や別離・傷害、資源の喪失をもたらす出来事は、災害の始まりでしかない。それに伴って生じる二次的な喪失や、さまざまな困難や理不尽さが、出来事の後に、次々と起きてくるのである。組織や安全が確保されている日常生活にスムーズに戻るためのテクニックが通用するはずはないのである。さて、活動時期について考えると、発災直後には、被災者は、生命の危機を乗り越えることが第一であり、食べ物・飲み物の確保、衣服によって寒さや暑さをしのげ、眠ることができる場所、トイレなどの基本的ニーズが最優先である。着るものがあり、避難所の中に自分の寝る場所があり、食事や飲み物が定期的に配給されるようになり、生活の基本ニーズが満たされたところで、はじめて心理社会的ニーズが生じてくると思われる。したがって、一般の被災者を対象とする心理社会的支援のために、直後にそのための要員を派遣することは意味がないと考えられる。これは、医療救護チームの一員として派遣する場合にも言えるが、心理社会的支援のチームを派遣することを想像すると、ニーズの食い違いはより明確である。- 85 -